

大学院運営委員長
野澤 康
現代社会は「多様」であり、「複雑」である。「多様性」「複雑系」などが時代のキーワードとなってきたことからも、この状況を読み取ることができる。これはすなわち、君たちが学ぶべき学問がさらに広範かつ奥深いものになってきていることを意味する。例えば、50年前と比べれば、時間的な経過に加えて、50年の間の新発見や新しい理論構築があり、社会の仕組みも大きく変化してきている。現代の学問はそうしたものすべてをベースに成り立っているので、その50年分のことを余計に学ばなければならない。新しいものが確立されたとしても、古いものをすべて捨て去るわけではなく、積み重ねられて行くのであるから。そう考えると、学部の4年間はあまりにも短い。実質的に、本当の意味での専門の研究をするのは4年生になってからである。3年生まではそのための基礎力を身につける、いわば助走期間と位置づけられ、この部分のボリュームが年々拡大してきている。
4年生になって卒業研究等で研究室に所属して初めて、 先輩・後輩と密度高く付き合い、また指導教員ともマンツーマンのやりとりすることを通して、研究室活動の楽しさ、研究や設計のおもしろさ・奥深さに気づいていくであろう。これこそが大学生活の良さなのである。しか し、こうしたおもしろさや良さに気づいても、すぐに卒業を迎える。このことに物足りなさを感じる学生も少なくない。そうした諸君には是非大学院に進学して、思いを遂げてから社会に出てほしい。工学系にあっては大学 院博士前期(修士)課程の2年間は社会的にも当たり前になってきており、それによって遅れをとることはない。むしろ、スキルアップしたことによるメリットのほうが大きい。
大学院での学習、研究、対外的な活動などを通して、 君たちは、以下のような、学部生活では得られない大き な能力を身につけることができるのである。これらをひ っさげて、大きく社会で羽ばたいてほしい。
大学院での時間の過ごし方は、研究室の中だけには留まらない。むしろ、積極的に研究室を飛び出して、学部時代には経験できなかったことも経験してほしい。研究を通じて、企業や役所、研究機関、一般市民の方々などとコラボレートしながら実社会の一員として活動することは、その後の進路選択や人生そのものにも影響を与えてくれる。また、学会等で発表することで、全国・全世界の仲間と知り合い、刺激を受けて、研究の新しい展開を考えるきっかけを得ることもできるし、一生付き合っていける友を得ることもできる。
こうした大学院進学で得られる様々なメリットは、大学院に進学しさえすれば君たちに付与されるというわけではない。君たち自らが望んで掴み取ろうとする意志がないと実現しない。君たち自らがそれを実現しようと努力しないと得られないものである。そうした努力に対して、教職員一同はバックアップを惜しまない。本学では実験施設等の研究環境や、国際学会参加補助金をはじめとする各種の制度が非常に充実している。これらの充実した「ひと・もの・かね」を最大限に活用して、有意義な大学院生活を過ごしてほしい。