【開催レポート#1】“好き”から“夢”が生まれ、未来の自分が創られる

2020 / 09 / 01

第1回 道先案内人/英国コベントリー大学准教授 豊田裕樹さん

国内外で活躍する卒業生を道先案内人に迎え、講演や対談などが行われるオンライン参加型セミナー『KUTE CheerUP Seminar 〜好奇心をカタチに〜』。
2020年8月1日に開催された第1回目のセミナーで道先案内人を務めたのは、自動車レース用エンジン開発の分野で世界的に活躍する豊田裕樹さん。

英国でエンジニアリングコンサルティング会社の代表を務める一方、英国国立コベントリー大学で教鞭を執る豊田さんが、いま後輩たちに伝えたいこととは?
夢を持つことの大切さや、世界に挑戦することの楽しさなど、未来を創るためのヒントが詰まったオンラインセミナーの様子をレポートします。

豊田 裕樹さん

工学院大学工業化学科を1989年に卒業。
以来、日本と海外を拠点に30余年にわたり自動車レース用エンジン(F1、ルマン、WRC、WTCC世界選手権レース)及び量産スポーツモデル等のエンジン開発、試作、実車両テスト、技術サポートを事業化し、欧州をはじめ世界各国で活躍する。
2017年に英国にてエンジニアリングコンサルト会社を設立。その一方で、次世代育成を目的に英国国立コベントリー大学で准教授としてモータースポーツパワートレイン技術などを教えている。

佐藤学長による挨拶

2020年8月1日に開催された『第1回 KUTE CheerUP Seminar 〜好奇心をカタチに〜』。
300人を超える在校生や卒業生、保護者が参加したオンラインセミナーは、佐藤光史学長の挨拶で幕を開けました。
「今回のセミナー名の冒頭に付く“KUTE”とはKogakuin University of Technology & Engineeringの略。本学の特徴や魅力を世界にわかりやすく伝えるために、3年ほど前からこの表記を使っています」と冒頭で話した学長は、続いて今回のセミナーを企画した意図について語ります。

「例年の入学式には、さまざまな分野で活躍する卒業生をお招きし、社会に出てからのお話などを伺っています。これは、多くの学生が元気づけられる有意義な機会のひとつでした。今、コロナの影響から世界中の人々が大変な事態と向き合っていますが、このような状況でも、皆さんに前向きな希望を持ってほしいという想いから、今回のセミナーを開催しました」。

“道先案内人”の豊田裕樹さんが登場

本セミナーでは、国内外で活躍する卒業生をゲストに招き、『MY CheerUP(元気の源や座右の銘)』、『MY Story(成功体験+挫折経験)』、『MY KUTE(自分にとっての工学院)』というテーマを軸にした講演や対談をオンラインで配信します。
第一回目の今回から3回連続で道先案内人を務めるのは、長年にわたって自動車レース用エンジンの開発に携わってきた豊田裕樹さん。現在は英国でエンジニアリングコンサルト会社の代表や英国国立コベントリー大学の准教授として活躍する卒業生です。

「私も学生時代にはたくさんの悩みがあり、さまざまな経験を経て今日に至っています。それらを共有することが、皆さんの勇気や希望につながればうれしいと思います」という言葉から講演はスタート。
豊田さんは、画像や地図などの資料を使って、これまで手掛けてきたプロジェクトや、自らが教鞭を執るコベントリー大学の特長、英国と日本の地理や文化の違いなどについて、自己紹介代わりに紹介していきます。
日本から遠く離れた地で活躍する卒業生の話を、リアルタイムで聞けるのもオンラインセミナーならでの利点のひとつ。クイズを交えながら進んでゆくセミナーに、思わず引き込まれてしまいます。

好きな事を好きといえる自分を創る。

オンラインセミナーのスタートからおよそ30分。『好きな事を好きといえる自分を創る』という豊田さんのメッセージが画面に現れると、話題は今回のセミナーの核心に迫っていきます。
「学生時代の私は勉強が嫌いだったし、成績も悪かった。けれど、夢は持っていたんです」と話す豊田さんは、自身の学生時代の思い出などを紹介しながら、なぜ自動車レース用のエンジン開発を志すようになり、どのように夢を叶えてきたのかを話していきます。
もともとは車ではなく鉄道が好きだったこと。
高校生の時にテレビで見たスペースシャトル帰還の映像が、化学に興味を持つきっかけになったこと。
17歳の頃に目の当たりにしたレーシングカーに衝撃を受けたこと。
さまざまなエピソードが語られますが、特に印象的だったのが、Always have a curiosity!(常に好奇心を持て!)というフレーズでした。
「将来の可能性は身の回りにあふれているけれど、好奇心がないと気づけない。まずは目の前に現れる出来事に『なぜ?』と思える好奇心を大事にしてください」と豊田さん。
たとえば、ある日、熱で真っ赤になったExhaust(排気管)を目の当たりにした豊田さんは、そのあまりの美しさに驚き、「自分も作ってみたい」と興味を持ったそう。
そんな好奇心は“好き”という気持ちを生み、それがいつか“夢”へとつながっていったと豊田さん。
「好きなことを見つける理由は、単純で良い。それより『これが好きなんだ』とシンプルに言い切れる“自分の意思”こそが成功を生むのだと思います」。
さらに豊田さんは、将来の自分像を思い描くことも大切だと話します。
「私は17歳か18歳の頃から、毎年1度、自分の将来像を寝ないで真剣に考える日を設けています。皆さんも、お正月でも誕生日でもいいから、1年後、3年後、5年後の自分がどうなりたいか考えることを習慣づけてほしいですね」

「これだけは誰にも負けない」を持つこと。

好きなことややりたいことが見つかったら、その後はどう行動するべきなのか。
まずは何も知らない初心者として、経験者からたくさん話を聞くことを心がけたい、と豊田さんは話します。
「できれば業界の偉人や先駆者と話すチャンスを狙ってください。積極的にアポを取って『習いたい』と頼んでみる。ためらわずにコンタクトをとってみることが大切だと思います」。
さらに先人に学び、技術や知識を習得した後は、意識的に「違うこと」をする。それが“新たな発見”につながるのだと豊田さんは話します。

さらに、失敗を恐れない姿勢やポジティブシンキングの大切さなどを伝えた後に豊田さんが語ったのは「USP」を持つことの価値でした。
「USPとはUnique Sales Pointの略。つまり、『これだけは誰にも負けない』という技術や知識のことです」。たとえば豊田さん自身のUSPは、エンジンのエンジニアとしては珍しく“機械科”ではなく“化学科”の出身であること。
「もともと私はスペースシャトルで使われていたセラミック繊維に興味があって化学科に進学し、エンジンは趣味として作り続けていた。このふたつを組み合わせられたことが、機械科出身の一般的なエンジニアと私の大きな違いになり、社会で生きていく上で大いに役に立ったのです」。
“好き”という気持をベースにした自分だけのUSPを身につけること。
それが、夢を実現する近道になるのかもしれません。

終わりに

セミナーの最後には質疑応答の時間も設けられました。
「工学院大学を卒業してよかったと思う点は?」という参加者からの質問に対し、豊田さんは「自分のやりたいことを提案した時、それを受け入れてもらえる環境がありました。また、2つのキャンパスで学ぶなかで、学問に限らずいろいろな発見や機会がありました」と回答。
また、「大学時代に学んだことで、社会に出て役立ったことは?」という質問には「大学時代は物理や数学が苦手でしたが、応用物理学の基本的な知識などはエンジンを作るときに役立ちました」と答えていました。

こうして幕を閉じた『第1回 KUTE CheerUP Seminar 2020 〜好奇心をカタチに〜』。
3期連続のセミナーの第1回となる今回は、豊田さんの経験をもとに、好奇心を原動力に自分の“好き”を見つけることの大切さや、先人に学びながら自分だけのUSPを持つことの価値について学ぶことができました。

次回以降は、豊田さんの海外での体験談や仕事への取り組み方などがテーマになる予定です。第2回は9月19日に開催されるので、ぜひ参加してみてください。