【開催レポート#5】先生と夢を語ろう

2021 / 01 / 22

第5回 道先案内人/
英国コベントリー大学准教授 豊田裕樹さん

学生/
工学院大学 先進工学部 環境化学科1年Nさん
工学院大学大学院 工学研究科 電気・電子工学専攻 修士1年Tさん
工学院大学 情報学部 コンピュータ科学科 4年Hさん

国内外で活躍する卒業生を道先案内人に迎えて行われるオンライン参加型セミナー『KUTE CheerUp Seminar 2020』。

2020年12月19日に行われた第5回セミナーは「先生と夢を語ろう」と題した特別編。第1〜3回のセミナーで道先案内人を務めた豊田裕樹さん(英国コベントリー大学准教授)と本学の学生3名が登壇し、対話形式のオンラインセミナーが行われました。

「今、興味があること」や「将来の夢」、「キャリアの描き方」、「豊田先生への質問」……など、さまざまなトピックスについての対話が行われた『第5回 KUTE CheerUP Seminar 2020 』のイベントレポートをお届けします。

豊田 裕樹さん

工学院大学工業化学科を1989年に卒業。
以来、日本と海外を拠点に30余年にわたり自動車レース用エンジン(F1、ルマン、WRC、WTCC世界選手権レース)及び量産スポーツモデル等のエンジン開発、試作、実車両テスト、技術サポートを事業化し、欧州をはじめ世界各国で活躍する。
2017年に英国にてエンジニアリングコンサルト会社を設立。その一方で、次世代育成を目的に英国国立コベントリー大学で准教授としてモータースポーツパワートレイン技術などを教えている。

自分の強みや特長を伝えることの大切さ

道先案内人の豊田裕樹さんと学生3名が登壇し、対話形式で行われる今回のオンラインセミナー。その冒頭で豊田さんは今回のセミナーの狙いや意義について伝えます。

大学生のための参加型セミナーであること、気軽に参加し積極的に発言してほしいこと、オンライン会議に慣れるチャンスであること。さまざまなポイントにふれた豊田さんは、こう続けます。

「今、コロナ禍の影響でビジネスシーンでもオンライン化が進んでいます。こうした場で積極的に自分の意見を伝えることは、社会に出る上でとても大切だし、面接の良い練習にもなるはず。今日は失敗も大いに結構なので、ぜひ積極的に参加してください」

続いては、道先案内人を務める豊田さんの自己紹介です。
学生時代にレースのエンジン開発の道を志し、アメリカやイギリスなどを舞台に世界のモータースポーツの最前線で活躍してきた豊田さんは、自身のキャリアを簡潔に話していきます。
■これまでの開催レポートはこちら: 第1回 / 第2回 / 第3回

さらに豊田さんは、自身の趣味についても紹介。1973年製の日産フェアレディ240Zを愛車にしていることや、電気機関車の運転免許を持っていること、ウインドサーフィンや寿司の赤貝が大好きなこと、英国の自宅で日本酒づくりに挑戦していることなど、趣味に関する多彩な話題が展開されました。

「なぜ今回のセミナーと直接関係のないようなパーソナルな話をしているのかと、疑問に思う方もいるかもしれません。でも、ビジネスの場では、自分の好きなことや特長を伝えて自身を印象づけることはとても大切なんです。『赤貝といえば豊田だよね』と覚えてもらっていることが、新しいコミュニケーションにつながるかもしれない。みなさんも、好きなことがあればどんどんアピールしてください」

3名の学生による自己紹介

続いては、今回のセミナーにスピーカーとして参加する3名の学生による自己紹介です。

最初に登壇したのは、工学院大学 先進工学部 環境化学科1年Nさん。

自然科学部に所属し、天体観測やバードウォッチングなどを通じて子どもたちに科学の魅力を伝える活動もしているというNさんですが、特に話題が盛り上がったのは、趣味の宝石収集について。
「小学生の頃から宝石に興味があって宝石を集めています」と話すNさんは、アメジストや珪石など、自身のお気に入りの宝石を紹介。豊田さんも興味津々の様子で「私の友達に宝石商がいますが、その方は世界中のジャングルを巡って原石を掘り当てて商売しているんです。ぜひNさんも世界に出て宝石を探してみてください」とコメントします。

さらに豊田さんは、「宝石探しはすごくユニークな趣味。たとえば企業の採用面接などでその話をしたら、『宝石好きな子がいたよね』と印象づけることができると思います。自身の専門分野でなくても好きなことをアピールすることは、とても大切です」と締めくくります。

2人目の自己紹介は、工学院大学大学院 工学研究科 電気・電子工学専攻 修士1年Tさん。

東京電機大学理工学部出身のTさんは、業務用市販ロボット実機を用いた研究への興味を持ったことが、工学院大学大学院に進学した理由だと話します。

Tさんは、バイオリン演奏や音楽鑑賞などが趣味であることも紹介。
豊田さんから楽譜を読めるようになるためのコツについて聞かれると、Tさんは「私の場合、最初は楽譜にドレミの文字を書き込みました。それで練習しているとだんだん読めるようになりました」と自身の経験談を話します。

さらにTさんが自身の好きなものとして自動車を挙げると、自動車の専門家である豊田さんも楽しそうに反応。二人の間で、好きな車種についての話題も飛び交いました。
最後に登壇したのが、工学院大学 情報学部 コンピュータ科学科 4年Hさん。自動車や鉄道、写真撮影が趣味だというHさんですが、豊田さんから「どんな車が好きですか?」と尋ねられると「スポーツカーよりも、働く車に興味があるんです」と返答。その答えに対し豊田さんは「消防車やクレーンでしょうか? それもまた面白い趣味ですね」と微笑みます。

情報学部コンピュータ科学科に所属し、情報セキュリティやサイバー犯罪に興味を持つHさんに対して、豊田さんは「なぜその分野に興味を持ったのですか?」と質問。その問いに、Hさんは「趣味でインターネットを使っているうちに、ネット上の人間関係のトラブルなどに気づいたことがきっかけでした」と自身の経験を紹介します。
さらに豊田さんは「情報セキュリティなどは、今後社会においてとても重要になってくる分野。自動車業界でも自動運転に対するハッキングへの対策も必要なので、ぜひHさんの視点と知識でサイバー犯罪を防いでください」と締めくくります。

将来の夢とキャリアの描き方

ここからは、いよいよ今回のセミナーの核心部。3名の学生たちがそれぞれのキャリアや将来の夢を胸に、人生の先輩である豊田さんに質問を投げかけていきます。

最初の質問者が、情報学部 コンピュータ科学科 4年Hさんです。
Hさんの質問の大部分は“起業”に関するもの。起業の準備や事業拡大の判断、共同設立者との関係性など、さまざまな疑問や質問を率直に投げかけるHさんですが、なかでも印象深かったのが「一般企業で働くことと、起業することの違いや、メリットやデメリットについて」です。

エンジニアリングコンサルタント会社の経営者として活躍する豊田さんは、この質問に対して「物事には必ず利点・欠点があります。ただ、大学卒業後のタイミングでどちらかを選ぶとしたら、私は一般企業で社会の仕組みを学んでゆくことを一度はやったほうがいいと思っています」と答えます。

さらにHさんの「いいアイデアを思いついた場合、ビジネスとして成立するかをどのように判断すべきか」という質問に対して「まずは自分が消費者目線でお客さんになってみること。これが起業する人にとってすごく大事だと思います。自分が欲しくて、世の中にないものを作り、消費者目線で『いくら払うか』を考えること。それが起業のスターティングポイントになる」と豊田さん。

また「独力で限界がある場合、どのように他人を頼るべきか」という質問について、豊田さんは2つのポイントを挙げます。

「ひとつは自分が得意なことをはっきりさせること。もうひとつは、不得意なことをはっきりさせて、その分野が得意な人を探して頼ること。たとえばHさんが情報セキュリティの分野が得意であれば、その部分については目一杯突き詰めてパートナーにベネフィットを提供する。その代わりに、苦手な分野はパートナーに任せる。つまり、ギブアンドテイクですね。そうすることで、頼る・頼られるいい関係が生まれると思います」


続いての質問者は、大学院 工学研究科 電気・電子工学専攻 修士1年Tさんです。
完成車メーカーへの就職を視野に入れているというTさんはプレゼンテーション資料を用いながら「自動車のチーフエンジニアになる」という自身の夢について語ります。
「人生で一度は、車の製造に関して名を残したい」、「自分が製造に関わった車が、世界中で走るところをみたい」という思いが夢に向かう原動力だと話すTさんは、電車や新幹線ではなく車にこだわる理由についても話します。

「行きたいところに自分で運転していけること。サーキットなどでスポーツ走行ができること、自分1人でコントロールできることなどが、電車や新幹線にはない自動車の特長。また、家族や友達、恋人も同乗できる自動車を造ることは、多くの人に“思い出”を届けることにもつながると思います」。理路整然と話すTさんに、豊田さん「自分のプレゼンテーションをしっかりと掘り下げていて、素晴らしいですね」と感心していました。

さらにTさんからは、乗用車の電動化やガソリン車の販売中止、自動運転など、自動車業界全般に対する質問も。専門家である豊田さんが、ひとつひとつのトピックに真摯に答えていることも印象的でした。

最後の質問者となったのが、先進工学部 環境化学科1年Nさん。

廃熱発電や廃棄物発電などの再生可能エネルギーに興味があるというNさんは、将来の夢について「廃棄物発電の発電機を開発して実用化したい」と話します。

「たとえば家で出たゴミで発電し、家庭の電力需要をまかなうことができれば、震災などの停電時にも役に立つはず。また、廃棄物の処理や二酸化炭素排出の抑制も可能になると思います」というNさん。

その構想について豊田さんは「最高のアイデアだと思います。コンパクトで買いやすい価格の自家用発電機を開発し、家庭に電力をしっかり供給できるシステムを作れたら面白いですね。そのためには、家庭にはどのくらいの電力が必要なのか、それを生むためにはどんな装置が必要なのか、ゴミは何キロぐらい必要なのかを知る必要がありますね。そこから答えが出ると思うので、とことん突き詰めて、ぜひ2030年までに“Nシステム”を完成させてください」と嬉しそうに話します。


「廃棄物発電の発電機の実用化」という夢を叶えるために、再生可能エネルギー先進国であるドイツやアメリカへの海外留学も考えているというNさん。

その思いについて豊田さんは「日本と世界の立ち位置を意識することは、どの分野においてもすごく大事なこと。海外経験は必ず将来の糧になるので、学生のみなさんにおすすめしたいですね」と話します。


さらにNさんから「ITの重要性」や「学生の今すべきこと」についての質問を受けた豊田さんは、こう答えます。

「ITの知識は、もちろん今後も大切です。しかし、廃棄物発電に興味があるなら、まずはそこを極めてください。その上でIOTの技術を学び、必要な部分は専門家であるHさんのような人に頼ればいい。まずはメインとなる柱を持て。それが私からのメッセージです。『今すべきこと』についても、やはりまずは自分の得意技をしっかりと磨くことが大切。一方で、余剰の時間を確保して、自分の趣味も突き詰めていくことも忘れないでほしいですね。そうすることでいろんなネットワークも広がるし、新しいアイデアも広がっていくはずです」
こうして、約2時間以上に及んだオンラインセミナーは終了を迎えました。豊田さんと3名の学生が登壇したセミナーでは、実に多岐にわたる対話が行われました。

自分の強みや特長をアピールすること。消費者目線からビジネスをスタートさせること。自分の得手不得手を見極め、他人を上手に頼ること。得意となる武器をしっかり磨くこと……。2020年12月19日に行われた『第5回 KUTE CheerUP Seminar 2020 』には、今後学生のみなさんが夢を叶えていくために必要なエッセンスが散りばめられていました。