プログラム

PROGRAM

生命化学科

有機合成化学研究室

指導教員:南雲 紳史 教授/安井 英子 准教授

Natural Products
タイトル 工学院大学における全合成研究
発表者 平尾 玲生(化学応用学専攻)
キーワード 天然物合成、新規合成反応の開発、核磁気共鳴装置(NMR)

全合成研究とは、生物が産生する様々な化合物を人工的に合成する研究です。当研究室では、これまでにSekothrixideの世界初の全合成を成し遂げています。現在はTorrubiellutin、Arenicolideの全合成を目指して研究を行っています。研究において化合物のデータを集める事は非常に重要です。目的物の天然物のデータだけではなく合成中間体が新規化合物である場合は、それぞれデータをしっかりと揃える必要があります。そして必要とされるデータは、1H-NMR,13C-NMR,MS,IR,旋光度などになります。今回は、Sekothrixide、Torrubiellutin、Arenicolideの合成研究において合成中間体、目的物のNMRのデータを揃えることで明らかになった事を紹介していきます。

生物医化学研究室

指導教員:小山 文隆 教授

タイトル カニクイザル酸性キチナーゼの頑強なキチナーゼ活性
発表者 上原 麻衣子(化学応用学専攻)
キーワード キチン、カニクイザル、酸性キチナーゼ、非ヒト霊長類モデル

カニクイザルは、キチン分解酵素である酸性キチナーゼ (acidic chitinase, CHIA) を胃で大量に発現している。本研究では、カニクイザル CHIA の特性解析を行った。サル CHIA の 37 ℃ における至適 pH は pH 5.0 であり、pH 2.0, pH 7.0 においても強いキチナーゼ活性を示していた (A)。pH 5.0 条件下における、サル CHIA の至適温度は 65℃ であった (B)。これらすべての条件下においてサルCHIA の活性はマウス Chia よりも高かった。サル CHIA は、37 ℃ 条件下で酸耐性を有し (C)、pH 5.0 においては 70℃ まで安定であった (D)。最後に、pH 2.0 および pH 5.0 条件下で、結晶性 α-キチンをサルCHIAと反応させたところ、(GlcNAc)2 に分解した (E)。このように、カニクイザル CHIA は頑強で優れた酵素特性を有し、結晶性キチンを分解できた。

生物資源化学研究室

指導教員:藤井 克彦 教授/油井 信弘 准教授

当研究室が目指す「環境調和型 微生物利用技術」
タイトル 微生物を活用したバイオ燃料生産と環境浄化
発表者 飯田 遥貴、森田 令一(化学応用学専攻)
キーワード 微生物、バイオ燃料、環境浄化

自然界の微生物のうち、これまで研究されてきた種は0.1%であり、残りの99.9%は未知の微生物であることが明らかとなっている。従って、微生物を探す場所や培養条件を変えることで、新しい微生物を見つけることが可能である。当研究室では、「食品・健康」・「環境浄化」・「エネルギー生産」等の各種産業分野に応用できる有用微生物を探索し、それらの性状解析を進めている。特に、乾燥ストレス条件で有用カロテノイドを生産する気生微細藻類、高濃度CO2適応能と窒素固定能の両方を持つ微細藻類-細菌共生体、消化汚泥を基質としてバイオガスを生産する微生物群集を中心に研究を進めている。

生体機能化学研究室

指導教員:今村 保忠 教授/辛 英哲 准教授

タイトル トリfasciaの線維構造研究法の確立
発表者 前田 夏希(化学応用学専攻)
キーワード fascia、コラーゲン線維、エラスチン線維

Fasciaは伸縮性に富む線維が全身につながるネットワークを形成しており、臓器や筋肉等のあらゆる構造物を包み境界をなしている。コラーゲンやエラスチンなどのECM成分で構成される一連の構造物であり内部を体液やリンパ液が流れ、その中を走行する毛細血管や神経、リンパ管を保護する。また、fasciaを介した直接の情報伝達も行われていると考えられている。しかし、臓器や器官によって構造や機能に違いがあるかなど、その全貌はまだ明らかにされていない。 本研究では、生体からfasciaを取り出し、種々な生化学的な処理と顕微鏡観察を組み合わせ、コラーゲン線維とエラスチン線維の線維構造の関係を明らかにする。

医薬化学研究室

指導教員:松野 研司 教授/大野 修 准教授

・GPR35の活性化は、IL-4の産生を抑制することで抗アレルギー作用が期待される。
・種差のないGPR35アゴニスト(bufrolin)のdocking studyを元に、種差の解消を志向したGPR35アゴニストを設計、合成した。
・構造最適化を検討し、一部の化合物について薬理評価が実施された。
タイトル 種差の解消を志向したGPR35アゴニストの合成研究
発表者 大山 透(化学応用学専攻)
キーワード Medicinal chemistry、GPR35、IL-4、docking study、in vivo

近年、アレルギー疾患患者数は著しく増加しており、効果的な抗アレルギー薬の需要が高まっている。Gタンパク質共役受容体の一種であるGPR35の活性化は、IL-4等の炎症性サイトカインの産生を抑制するため、抗アレルギー薬の標的分子として期待されている。しかし、多くの既知アゴニストには、ヒトと齧歯類間に種差が存在する。種差の存在は、治験に際して非臨床試験結果が外挿困難となり医薬品開発の弊害となる。本研究では、ごく僅かに存在する種差のないGPR35アゴニストbufrolinとGPR35ホモロジーモデルのdocking studyから種差解消の要因を考察し、種差のないGPR35アゴニストの創製を検討した。

応用化学科

環境分析化学研究室

指導教員:釜谷 美則 准教授

ヨウ化物イオン定量の反応式。ヨウ化物イオンによる接触反応が起こり高感度分析が可能となっている。
タイトル ロイコ体試薬を用いたヨウ化物イオンの高感度吸光光度法
発表者 成井 拓弥(化学応用学専攻)
キーワード 吸光光度法、ヨウ化物イオン、高感度分析、ロイコ体試薬

ヨウ素の公定法であるヨウ素抽出吸光光度法やヨウ素滴定法の定量下限は0.1ppm程度である。ヨウ素の環境中での動態を知るには、ppbレベルでの定量法が求められている。本研究では、ppbレベルのヨウ素の吸光光度法としてロイコ体試薬を用いた接触反応を利用した高感度定量法について検討した。この呈色反応機構は解明されていないが、初期の目的のppbレベルのヨウ化物イオンの定量ができた

機能性高分子研究室

指導教員:伊藤 雄三 教授/川井 忠智 准教授

タイトル メソゲン骨格を有するアルキル鎖長2のフェニルベンゾエートツインメソゲン型エポキシポリマーの高熱伝導メカニズムの解析および研究テーマの紹介
発表者 石澤 健(化学応用学専攻)
キーワード 高分子材料の高熱伝導メカニズムの解析、高圧水素下におけるゴム材料の高次構造変化の解析、イオン液体を用いたセルロース誘導体の合成と分子特性解析、リビングラジカル共重合体の分子特性解析

電子機器の高集積化・小型化に伴う機器内部の発熱は、動作不良を引き起こす原因となっている。電子機器の絶縁部には、汎用エポキシポリマーが用いられているが熱伝導性が低く、放熱が問題になる。液晶を示す剛直な2つのメソゲン構造を柔軟なアルキル鎖で結んだツインメソゲン型エポキシポリマーは、汎用エポキシポリマーより高い熱伝導性を示すが、その定量的メカニズムには不明な点が残っている。当研究室では、メソゲン構造、アルキル鎖長等の分子構造の違いが、液晶転移温度範囲、液晶相、ポリマーの高次構造、熱伝導性に与える影響を解析し、より高性能な熱伝導性ポリマー材料を開発している。

機能性セラミックス化学研究室

指導教員:大倉 利典 教授/吉田 直哉 准教授

(a) 超イオン伝導性結晶化ガラスの結晶構造
(b) 高レベル放射性廃棄物固化ガラス
(c) 超撥水表面の水滴の様子
(d) 逆オパール構造のSEM像
タイトル 環境やエネルギー問題を解決する機能性セラミックスの開発
発表者 川田 耕司、後藤 拓馬(化学応用学専攻)
キーワード 超イオン伝導性結晶化ガラス、放射性廃棄物固化ガラス、濡れ性、光触媒、セッコウ

環境エネルギー問題を解決するため、ガラス、セラミックスなどの無機材料を用いて、超イオン伝導・廃棄物固化・環境浄化・濡れ性制御などの機能を付与した、新しい機能性材料の創製を目指して研究を行っています。二次電池や燃料電池、化学センサーへの応用が期待できる超イオン伝導性結晶化ガラスや、耐熱・耐水・耐放射線性に優れた高レベル放射性廃棄物固化用ガラスの開発などを進めています。 また、環境浄化や環境負荷の小さい表面に関する研究も行っています。固体表面での液体の濡れ挙動と原理解明などのベーシックサイエンスから、セルフクリーニング機能や、高度な動的撥水性を付与した無機化合物の研究も行っています。

触媒化学研究室

指導教員:奥村 和 教授

Reaction procedure and yield obtained during the Friedel-Crafts reaction with different support used.
タイトル Friedel-Crafts Acylation of Anisole with Carboxylic acid Catalyzed by Molybdenum oxide supported on Titania
発表者 Owoua Ngala Dominique Elisabeth(化学応用学専攻)
キーワード Friedel-Crafts Acylation, Octanoic acid, Molybdenum oxide, Titanium dioxide

Supported MoO3 on TiO2, CeO2, Al2O3, SiO2 and ZrO2 catalysts were prepared by impregnation method and used in the anisole acylation reaction. Through experimental study and characterization analysis, we have found that MoO3/TiO2 with anatase structure showed the best catalytic performance among the catalysts studied. Brönsted sites was observed in the catalyst and no presence of Lewis acid has been demonstrated by Fourier Transform Infrared Spectrometry after adsorption of pyridine (Py-IR). Furthermore, the yield of 4-methoxyoctanophenone (4-MOP) among the isomers was found to be quantitative, a small amount of isomers were detectable. With the excellent recyclability and reusability, the MoO3/TiO2 exhibited at least 3 times quantitatively both conversion of anisole and yield of 4-MOP. This opportunity obviously gives a green synthetic tool for heterogeneous acylation reaction.

食品化学工学研究室

指導教員:山田 昌治 教授 / 杉山 健二郎 講師

手延べ麺と機械製造面のグルテン組織構造と力学特性比較
タイトル 食品のおいしさを見える化する
発表者 木村 星也、入江 穂香(応用化学科)
キーワード 食品、おいしさの見える化、組織構造、力学特性、成分分析

食品のおいしさは、味や香り、食感が組み合わさることでもたらされている。私たちは、これらの要素を数値化し統合的に解析することで、おいしい食品の開発に役立てることを目指している。製造方法の異なるうどんについて、麺中のグルテンの組織構造と、麺の力学特性の関係性を明らかにする研究を進めており、今回の発表では、それらの研究を通して見えてきた手延べ麺の秘密について紹介する。また、八王子市の特産品の一つであるパッションフルーツについて、味や香りにかかわる成分の網羅分析と官能評価とを組み合わせて、そのおいしさを解析する研究に取り組んでおり、その成果の一部についても紹介する。

無機表面化学研究室

指導教員:阿相 英孝 教授

図1(左) アノード酸化前後のアルミニウムの外観写真、皮膜の表面および断面構造
図2(右上) 赤絵試作品 (右下) 酸化鉄微粒子のTEM像
タイトル ナノテクで表面をデザインする~高機能性ナノマテリアルの創製~
発表者 川邉 暖、佐藤 晃太(化学応用学専攻)
キーワード 表面化学、電気化学、固体化学、アノード酸化、ナノ・マイクロ構造体

本研究室の代表的な研究テーマとしてアノード酸化と赤絵磁器が挙げられます。
アルミニウムを硫酸などの電解液中でアノード酸化すると、表面に厚さ数百 nm から数十 µm のポーラス型酸化皮膜が生成します。この皮膜を金属表面に作製することで、耐食性・耐摩耗性・装飾性などの様々な機能を付与できます。
赤絵磁器は、施釉後の磁器を赤、青、黄、緑、紫などの絵具により絵付し700~900℃で焼成することで作られます。赤色酸化鉄であるヘマタイト (α-Fe2O3)を着色剤として用いる“赤”の発色制御が最も難しいため、その発色機構を科学的に明らかにすることを目的として、高彩度酸化鉄の開発や陶磁器用フリットとヘマタイトの反応について研究を行っています。

有機高分子化学研究室

指導教員:小林 元康 教授

原子間力顕微鏡により塩水中でコリンホスフェート型ポリマーブラシにコロイドプローブを押しつけと引き離しを繰り返し、相互作用を測定している様子
タイトル 生体膜分子を模倣した化学構造を持つブラシ状高分子の水中特性解析
発表者 小宮 拓海(化学応用学専攻)
キーワード 高分子合成、生体適合材料、生物模倣、水和、分子間相互作用、原子間力顕微鏡

細胞の生体膜はリン脂質二分子膜で構成されており、表面はホスホリルコリンという極性官能基で覆われている。本研究ではその類似化合物であるコリンホスフェート基を有するポリマーを合成し、水中や塩水中における分子鎖の構造変化を原子間力顕微鏡で観察した。コリンホスフェート基は特定のタンパク分子や細胞表面と特異的に相互作用することが明らかにされており、がん細胞にのみ薬剤を届ける分子カプセルなどへの応用が期待されている。

環境化学科

水環境工学研究室/エネルギーシステム工学研究室

指導教員:中尾 真一 特任教授/赤松 憲樹 教授/Xiaolin Wang 客員教授

膜を用いた水処理試験の様子。廃水が膜で処理され、清澄な水が得られている。
タイトル 中尾・赤松・王研究室の研究
発表者 佐藤 奎吾、佐野 正宗、竹内 智也、中村 瑞紀、渡辺 茉美(環境化学科)
キーワード 膜分離、水処理、水素、二酸化炭素、マイクロカプセル

中尾・赤松・王研究室では、環境問題・エネルギー問題・安全安心な生活に資する膜技術に関する幅広い研究を行っています。現在、本研究室では、以下の4つの研究を精力的に行っています。
・ガス分離用シリカ膜の開発と、これを利用した革新的膜反応器の開発
・水処理用新規低ファウリング膜の開発と、これを利用した省エネ型水処理プロセスの開発
・膜分離技術の新しい工学的利用法の探究
・膜乳化技術、およびマイクロフルイディック乳化技術を利用した機能性マイクロカプセルの開発

環境計算化学工学研究室

指導教員:高羽 洋充 教授

シミュレーションで扱う材料とその応用
タイトル コンピュータ化学と機械学習を利用した環境に優しい材料設計
発表者 樋口隼人、廣澤史也(化学応用学専攻)
キーワード 分子動力学法、量子化学計算、マテリアルズインフォマティクス

コンピュータの発達によって,実際に実験をしないでもシミュレーションで分子の特性や材料の物性を研究できるようになりつつあります.我々は,分子動力学法や量子化学計算といった手法を用いて研究をすでに行ってきましたが,最近では深層学習法といった最先端の計算手法も取り入れています.また,材料についても,高分子膜だけでなく“分子ふるい”効果をもつ多孔体や,特徴的な2次元空間を有し枯渇の心配がない粘土についても扱っており,未来社会に必要な新規材料についてシミュレーションという新しいアプローチで研究・開発を行っています.

大気環境工学研究室/環境生物化学工学研究室

指導教員:並木 則和 教授/中山 りょういち 助教

タイトル 空気浄化技術と生物資源の有効利用で総合環境創成を目指して
発表者 清水 由梨、水島 友也(化学応用学専攻)
キーワード エアフィルタ、VOC、エアロゾル、酵素反応、生体高分子

空気中に存在するVOC(揮発性有機化合物)等のガス状および粒子状汚染物質を効率的に取り除いて空気の清浄化を行うためには、対象とする汚染物質の発生ならびにその変質過程や化学的・動力学的な性質を把握した上で検討する必要があります。そして、普段過ごす一般室内環境のみならず、クリーンルームのような製造環境や工場排ガス処理と言った多種多様な場での総合的な空気清浄化技術を研究します。また、生物由来の有機質資源の有効利用として、酵素触媒を用いた改質反応や生体高分子を基材として機能性素材の開発、を行う。このように、当研究室は化学工学と生物工学を融合した総合環境創成を目指します。

環境衛生工学研究室

指導教員:岡田 文雄 教授

タイトル 促進酸化水の研究による新コロナウィルスの不活化
発表者 岡田 文雄 教授 他(環境化学科・化学応用学専攻)

環境修復工学研究室

指導教員:酒井 裕司 准教授

溜池底質土と鉄供給資材(製鋼スラグ)による沿岸海域実証試験での海藻生育の違い
左:対照区(改良前) 右:試験区(改良後)
タイトル 木質バイオマスと溜池底質土による磯焼け改良剤の開発及び評価
発表者 小永井 翼(化学応用学専攻)
キーワード バイオマス利用、沿岸生態系、溜池底質土、腐植酸鉄、栄養塩

当研究室にて実施した、溜池底質土と鉄供給資材(製鋼スラグなど)利用による沿岸海域での実証試験において、海藻生育の成果が得られており、腐植酸鉄と栄養塩の供給が生育に有効であることは解明されています。そこで現在、沿岸環境修復のみならず、地域バイオマスを有効利用することも目的として、木質バイオマスと溜池底質土を利用した磯焼け改良剤の開発を行っています。改良剤作製時における混合比、水分量、温度及び発酵条件などの違いによる腐植酸鉄生成メカニズムについて検討しています。さらに、今後の実証試験における腐植酸鉄と栄養塩の供給方法の検討と評価も行っています。

電気環境化学研究室

指導教員:関 志朗 准教授

タイトル Physicochemical properties of sulfolane based liquid electrolyte and their sodium battery performances
発表者 稲葉 航平(化学応用学専攻)

機能材料工学研究室

指導教員:桑折 仁 准教授

タイトル 熱電素子のモジュール化に関する研究
発表者 唐沢 彩生、辻 稜之進(環境化学科)

応用物理学科

磁性応用研究室

指導教員:赤城 文子 教授

熱アシスト磁気記録装置の模式図
タイトル テラビット級の記憶容量を目指した熱アシスト磁気ディスク装置の研究
発表者 松島 直史(電気・電子工学専攻)
キーワード 磁気ディスク装置、熱アシスト磁気記録方式、ビットパターン媒体

磁気ディスク装置はテラビット級の高記録密度化のために、熱アシスト磁気記録方式が研究・開発されている。この方式は、記録領域を近接場光発生素子からの光で温めることによって、記録をアシストする方式である。また、情報を記録する媒体には、円柱型の磁性ドット1つを1ビットとして記録するビットパターン媒体(BPM)が提案されている。BPMはノイズとなるビット間の影響を低減できるため、記録密度を高めることが期待できる。しかし、現状のBPMは磁性ドットの径や位置、ドットのキュリー温度にばらつきがある。本研究は、記録密度とこれらばらつきの許容条件の関係を明らかにすることを目的に計算機シミュレーションを行っている。

磁性応用研究室

指導教員:赤城 文子 教授

L10型FeNi合金における各原子のd軌道の状態密度
(a). Fe原子の局所状態密度 (b). Ni原子の局所状態密度
タイトル 第一原理計算を用いた永久磁石の放射線減磁メカニズムの研究
発表者 鈴木 涼馬(電気・電子工学専攻)
キーワード 永久磁石、放射線減磁、第一原理計算、宇宙用材料

永久磁石は人工衛星のモーターに利用され、機体の姿勢制御の役割を担う。しかし宇宙空間では放射線の影響により永久磁石は劣化し減磁することが問題となっている。主な原因は放射線粒子が結晶に入射することで電磁カスケードを起こし、広範囲に渡るスピン乱れ、原子の弾き飛ばしなどが発生するためである。電子線の照射実験より、放射線減磁は保磁力、温度特性の大きさに強く影響を受けることが分かっている。本研究では磁性体材料について微視的な視点から計算モデルを構築し、スピン乱れによるエネルギー変化、保磁力を第一原理電子状態計算より求めることで耐放射線性に優れた磁石を明らかにする。

物質計測制御研究室

指導教員:坂本 哲夫 教授

乾燥基板に対してエレクトロスプレーにより噴霧された単一培養細胞の光学顕微鏡画像
タイトル 単一細胞の急速凍結法の開発
発表者 田村 和弥(電気・電子工学専攻)
キーワード 細胞、エレクトロスプレー、TOF-SIMS、急速凍結

現在、医学・病理・創薬などの分野で生体内の分子及び原子の挙動や機能の解明が重要視されている。しかし、単一細胞の微細構造の成分イメージングは未だに達成されていないのが現状である。本研究室で開発した単一微粒子の分析を目的としたFIB-TOF-SIMSは細胞内微細構造の成分イメージング画像の取得が可能な高分解能を有しているが装置内が真空という問題がある。試料を凍結処理し分析を行えば真空装置での水分の揮発などは防げるが、単一細胞の非結晶状態の凍結を行うことは困難である。本研究ではエレクトロスプレーを用いて単一細胞の急速凍結を可能とする機構の開発を行った。

物質計測制御研究室

指導教員:坂本 哲夫 教授

同位体毎のセシウムのイメージング
タイトル 多色共鳴イオン化法の開発
発表者 大森 柚花(電気・電子工学専攻)
キーワード 質量分析、微量分析、難分析核種分析、レーザーイオン化、イメージング

福島第一原発事故が発生して以降、現在では廃炉に向けた作業の段階にある。しかし、安全措置の観点から、」作業に伴い発生する放射性物質を含むダストについて懸念されており、それらの検出方法について検討されている。我々が開発した共鳴レーザーイオン化中性粒子質量分析法(R-SNMS)では、質量分析法で問題となる同重体干渉を防ぎながら、μm~sub-μmの微小領域イメージングが可能である。そこで、本研究では放射性セシウムと自然界に存在するバリウムの同重体干渉を回避し、世界で初めて放射性セシウムの同位体比測定に成功した結果について述べる。

固体物性研究室

指導教員:尾沼 猛儀 教授

岩塩構造酸化マグネシウム亜鉛薄膜の発光スペクトル
タイトル 人にやさしい深紫外線光源の開発
発表者 猪狩 有生(電気・電子工学専攻)
キーワード 真空・深紫外線光源、酸化マグネシウム亜鉛、ミスト化学気相エピタキシ法

最近、207~222 nm近辺の波長の深紫外線を選択的に照射することで、人の組織を損傷することなしに空中浮遊のウィルスを不活化できることが解明されました。当研究室では、ミスト化学気相エピタキシ法を用いて原子層ステップを有する岩塩構造酸化マグネシウム亜鉛薄膜の結晶成長に成功し、波長163 nmから250 nmの波長域でバンド端発光させることに成功しました。研究成果は水銀の撤廃の他、光源の小型化や省エネに貢献する技術として注目されています。発表では、角度依存カソードルミネッセンス法により、深紫外線域の放射パターンを評価した結果を紹介します。

結晶成長研究室

指導教員:山口 智広 准教授

GaInN成長時のその場XRD-RSM観察。(左)Si層未挿入(右)Si層挿入サンプルの成長開始30分時(GaInN約60 nm)。
タイトル 放射光を活用したGaInN結晶成長のその場観察
発表者 横山 晴香(電気・電子工学専攻)
キーワード 結晶成長、放射光、GaInN、太陽電池、光無線給電

GaInNは青色LEDや緑色LEDの発光素子材料として使用されています。高品質なGaInNは、光を用いて機器への給電を行う光無線給電(OWPT)用の受光器(太陽電池)として利用できることが期待されています。受光器に展開可能である高品質なGaInN膜を得るためには、成長過程の制御、特にヘテロエピタキシャル結晶成長時の格子緩和プロセスの制御が必要となります。本研究では、SPring-8の放射光X線を利用して、GaInN結晶成長中の原子レベルでの格子緩和プロセスのその場観察を行いました。基板との界面にSi層を挿入することで、GaInNの格子緩和が促進されることが確認されています。

フォトニクス研究室

指導教員:本田 徹 教授

タイトル μ-LEDディスプレイに向けたRF-MBE成長した赤色発光GaInNにおける結晶構造が光学特性へ及ぼす影響
発表者 吉田 涼介(電気・電子工学専攻)
キーワード 結晶成長、µ-LEDディスプレイ、RF-MBE、赤色LED、GaInN

本研究室ではµ-LEDディスプレイ応用の観点からGaInNを用いて高発光効率赤色LEDの製作検討をおこなっている。GaInNは青色LEDの発光層に用いられる化合半導体材料でありIn組成制御によって可視光全域にバンドギャップを持つ。高In(= 40%程度)組成にすることにより理論上、赤色に発光する。しかし、赤色LEDを高In組成GaInNで製作する場合、青色LEDと同じGaInN/GaN MQWsで発光層を形成するとGaInNとGaNの格子不整合が大きくなり発光効率が著しく低下する。本研究では発光効率低下を防ぐためにGaInN/GaInN MQWsやナノコラム結晶という新しい構造を提案している。また、全組成域でGaInNを安定供給できるRF-MBEでの成長を行った。これらの試料は光学特性を中心に物性評価を定量的に行った。

ナノ・バイオ材料研究室/酸化物エレクトロニクス研究室

指導教員:佐藤 光史 教授/永井 裕己 准教授

Pt担持Ti電極に接続して、水を光分解できるLMO薄膜の透明なPV-LIB
タイトル Li2MnIII0.2MnIV0.8O2.9薄膜を正極活物質とする光充電型リチウムイオン電池と水分解
発表者 諏訪園 豊(化学応用学専攻)
キーワード Li2MnO3薄膜、光充電型リチウムイオン電池、分子プレカーサー法、水分解

一般的なリチウムイオン電池は、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LCO)を用いている。元素戦略の観点からCoをMnに置換するために、酸素欠損型マンガン酸リチウム(Li2MnO2.9、LMO)薄膜を分子プレカーサー法で形成した。LMO薄膜とチタニア薄膜を正極と負極の各活物質としたFTOガラス電極と、LiPF6含有有機電解液を組み合わせたデバイスを形成したところ、0.2 mAの定電流印加と負極への疑似太陽光照射の両方で、LCO薄膜の光充電型リチウムイオン電池(PV-LIB)より高電圧を発生した。また、30% NaOH水溶液を入れたH型セル中のPt担持Ti電極に新たなPV-LIBを接続し、負極に紫外光を照射したところ、外部バイアスなしに水が分解して水素が発生することを確認した。

ナノ・バイオ材料研究室/酸化物エレクトロニクス研究室

指導教員:佐藤 光史 教授/永井 裕己 准教授

断面SEM像(倍率5000倍)
(左)幅0.5 μm・深さ6 μmのトレンチ構造加工Si基板、(右)反応溶液を用いてCuを埋入したSi基板。表面を研磨すると細線回路になる。
タイトル 分子プレカーサー法による銅膜の常温形成とトレンチ構造加工Siへの銅埋入
発表者 石井 雅之(電気・電子工学専攻)
キーワード 銅膜、分子プレカーサー法、常温形成、トレンチ構造加工Si

銅は、電気と熱の伝導体として優れており、化学的に安定で比較的安価な素材である。研究室では、分子プレカーサー法(MPM)によって、銅錯体を含む溶液をガラス基板に塗布した後、熱処理などによる均一な銅薄膜形成を達成してきた。本研究では、新たに調製した銅プレカーサーと還元剤との溶液内反応を利用して、ガラス表面に触媒などを付与することなく、常温で反応溶液と接触させたガラス基板上に高導電性で密着した銅膜を析出させることに成功した。さらに、この新たな方法を応用して、集積回路の配線となるトレンチを表面に加工したSi基板に緻密な銅を室温で析出させて、微細トレンチ内への銅の埋入を達成した。

情報ディスプレイ研究室

指導教員:高橋 泰樹 教授

新規提案法によるフレクソ係数測定中の液晶セル写真
タイトル LCDの光漏れ不具合現象の原因となるフレクソ効果の評価法の開発
発表者 下田 宏輝(電気・電子工学専攻)
キーワード 高精細液晶ディスプレイ、液晶材料、フレクソエレクトリック係数、光漏れ

液晶ディスプレイの高精細化必要に伴い、画素電極エッジでの光漏れやちらつきの不具合現象が報告され、原因としてフレクソエレクトリック効果が指摘されている。これは液晶材料に起因するものであり、その係数の評価方法は提案されているものの、特殊な装置が必要であったり、そのような装置を使っても不純物の影響により値が定まらなかったりする。そのため、材料メーカーも評価法を模索しているのが現実である.その係数には2種類がある。液晶材料の性質から、これらの「和」、あるいは「差」として評価することが多い。我々は、「差」の評価法として、簡単に測定でき、数十サンプルの測定平均に匹敵する手法を提案し、研究を行っている。

宇宙・極限環境材料研究室

指導教員:屋山 巴 助教

構造モデリング技術の習得
a) 窒化ガリウム結晶の3×3×3スーパーセルのモデル作成例 b) 熱硬化性エポキシ樹脂 BADGEのモデル作成例
タイトル 宇宙用材料の微視的構造の安定性に関する理論検討
発表者 佐藤 龍生、山下 大輝(応用物理学科)
キーワード 宇宙用太陽電池、複合材料、欠陥、界面特性、第一原理計算

本研究室では、宇宙機器類に適した高性能材料として、III族窒化物半導体と複合材料を対象に、第一原理計算を用いて微視的な観点から材料特性に関する研究を推進している。III族窒化物半導体は、宇宙用多接合型太陽電池の次世代材料として期待される材料である。宇宙空間での利用に必須となる、放射線耐性に関する評価を行う。一方、複合材料は軽量性と強度を兼ね備えた構造材料として宇宙用途において重要であり、樹脂/強化材界面特性を調べる。本研究室では4年生が研究を進めており、現時点では研究の過程の段階にある。ここまでの研究の経過として、習得した構造モデリング技術をもとに作製した各材料モデルを示し、計算結果の一部を報告する。

機械理工学科

クリーンエネルギーシステム研究室

指導教員:雑賀 高 教授

アンモニア分解システム
タイトル アンモニア燃料を用いた燃料電池自動車の試作開発
発表者 湯田 友哉(機械工学専攻)
キーワード 自動車、燃料電池、新エネルギー、代替燃料

私たちの生活に欠かせない「自動車」は、排気中に多くの二酸化炭素を含み、地球温暖化の一つの原因となっています。そこで、二酸化炭素の排出を抑制するために、次世代自動車や、次世代発電システムを対象として研究を行っています。私たちは水素保有率の高さや、貯蔵輸送の面で新しい水素キャリアとして、アンモニアに着目しました。アンモニアを熱とルテニウム系触媒を利用し、改質して得られた水素を燃料とする、新たな燃料電池自動車の試作開発に取り組んでいます。アンモニア分解温度の低下や分解器の高効率化、車両搭載に向けたシステム全体の軽量化を課題とし、新たな燃料電池自動車の実現に挑戦しています。

生産工学研究室

指導教員:武沢 英樹 教授

タイトル 粉末混入放電による各種金型鋼の仕上げ加工特性
発表者 元村 蓮(機械工学専攻)

材料加工研究室

指導教員:塩見 誠規 教授

タイトル 材料加工研究室の紹介
発表者 塩見 誠規 教授(機械理工学科・機械工学専攻)

知能機械研究室

指導教員:金丸 隆志 教授

タイトル Interactive Floor Interfaceを用いた教育支援システムの開発
発表者 大野 智哉(機械理工学科・機械工学専攻)

医療工学研究室

指導教員:堀内 邦雄 准教授

タイトル 医療工学研究室の紹介
発表者 堀内 邦雄 准教授(機械理工学科・機械工学専攻)

航空熱流体工学研究室

指導教員:佐藤 允 准教授

タイトル 航空熱流体工学研究室の紹介
発表者 佐藤 允 准教授(機械理工学科)

機械音響学研究室

指導教員:貝塚 勉 准教授

タイトル 最近の研究紹介:振動騒音の制御、パーソナル音響空間の実現、音響HMIのデザイン
発表者 貝塚 勉 准教授(機械理工学科)

システム設計研究室

指導教員:齊藤 亜由子 助教

タイトル 動作計測のためのシステム設計
発表者 齊藤 亜由子 助教(機械理工学科)

教育推進機構

ナノ化学研究室

指導教員:高見 知秀 教授

ナノ化学研究室の旗
タイトル 研究室紹介
発表者 服部光佑、米田里緒
キーワード ナノピペット、プローブ顕微鏡、細胞工学

先端径が数百ナノメートル以下のプローブを使った分子操作など、ナノスケールでの化学を対象として研究を行っています。特に、ガラス製のナノピペットをプローブとして細胞への分子注入や特定イオンの局所検出、そしてそれを実現するための装置開発を行っています。

理論化学研究室

指導教員:徳永 健 教授

分子型量子ドットセルオートマトン(分子QCA)の概略
タイトル 研究室紹介
発表者 服部光佑, 米田里緒
キーワード 量子ドットセルオートマトン(QCA)、反応機構、生体分子モーター、分子設計

分子・原子・電子の動きをコンピュータでシミュレーションしています。分子・原子・電子の動きを支配する因子を明らかにすることで、高機能材料や反応機構を提案できます。 「QCAコンピュータ」として有用な分子の設計や 「分子モーター」 「不斉合成反応」のメカニズムの解明を目的としています。

バイオインターフェイス研究室

指導教員:大家 渓 助教

バイオインターフェイス研究の概略
タイトル 研究室紹介
発表者 服部光佑、米田里緒
キーワード 金属・金属酸化物薄膜、表面処理・加工、細胞適合性、血液適合性

医療への応用を目指した、表面・界面を制御した材料表面 (Biointerface) の創製を目指しています。 薄膜作製技術や 粉末冶金技術など、多様な材料の作製技術により、生体 (細胞や血液) との相性が良い新規の材料の作製を試みています。また、さまざまな工学技術を応用し、材料表面に機能性を付与する研究も行っています。

素粒子論研究室

指導教員:進藤 哲央 教授

素粒子の謎と宇宙の謎を同時に解く可能性のある模型の例(KNT模型)。ニュートリノ質量を説明するために導入された新粒子が暗黒物質の候補となる。
タイトル 暗黒物質とKNT模型
発表者 入江 遥子(電気・電子工学専攻)
キーワード 素粒子、標準模型、暗黒物質、KNT模型

現在ある素粒子標準模型では説明できないことは多くあり、その問題の一つに暗黒物質の存在があります。暗黒物質とは、これまで宇宙の観測に使われてきた電磁波等では見えないが、銀河の回転曲線や重力レンズ効果などからその存在を示唆されている物質です。また標準模型では宇宙のバリオン数の起源や、ニュートリノ質量を説明できないといった問題点もあります。このような素粒子の謎と宇宙の謎を同時に解く可能性のある模型の例としてKrauss-Nasri-Trodden(KNT)模型が挙げられます。この模型でニュートリノ質量を説明するために導入された新粒子が、暗黒物質の候補となります。