卒業生インタビュー#05 | 建築学部10周年

卒業生の歩み・言葉から紐解く
建築学部10周年
各分野との密な距離感が
知識の上積みと
可能性を生む。

#5 岡 健太郎Kentaro Oka

工学院大学 文化財建築耐震業務主任研究員
2017年・修士課程修了/田村研究室

修士課程修了後、セメント系の建材メーカーに就職。約4年間、開発部門で働きながら、大学の客員研究員としても活動していました。その後、文化財建築の修繕を手伝ってもらえないかと恩師から打診を受けたことをきっかけに、工学院大学の研究員に転職。文化財建築で使用されている漆喰部分の補強を中心に、伝統的建造物の保存・再生について研究しています。

Q. 工学院大学に進学したのはなぜ?
A. まずは、日本初の建築学部に惹かれましたね。それと、恩師である田村教授の存在も大きかったです。建築材料を専門にする面白そうな人がいるぞと(笑)。

Q. 工学院大学の魅力とは?
A. 教授と学生、学びの領域等、それぞれ距離が近くいつでも相談し合える環境はいいですね。材料、計画、構造、デザインなど、研究室フロアはロの字型に各研究室があり、中央の共有スペースで常に議論ができます。様々な分野の英知が結集し建物は生まれる。快適性、使い勝手、メンテナンスの面などに問題があるようではいい建物といえませんから。

Q. 今後の目標は?
A. 今は博士号の取得を目指してはいますが、文化財の修繕にも力を注いでいきたいと考えています。また、勤めていた企業とはまだ繋がりもあるので産学連携の可能性も模索していけたらいいですね。

Q. 後輩たちにアドバイスするとしたら?
A. 僕は材料の魅力に気づきに大学に入りましたが、デザインなどひととおり学んだうえで今がある。こだわりも大事ですが、偏った考え方だと可能性自体を潰しかねないので、固執せず柔軟に取り込む姿勢をもつことが大事だと思います。

WORKS

岩手銀行

工学院大学の前身である工手学校の設立にも貢献した建築家・辰野金吾氏が設計した「岩手銀行赤レンガ館」。1911年に竣工し、100年以上にわたる銀行の役割を終えたのち、2016年からは重要文化財として公開されている。公開前には約3年に及ぶ修復工事が実施され、天井の漆喰の修復を本学建築学科の田村雅紀教授が監修のもと、岡さんもプロジェクトの中心として関わった。文化財に指定された建造物は、手を加えられる範囲が限られており、その中でいかに補修や防災対策を行うかが鍵となる。プロジェクトでは、漆喰を固定することで天井の剥離・剥落を防ぐ補修方法を開発。現状保存だけでなく外観を維持しつつ安全性も確保し、さらには従来の工法より短時間・低コストを実現したこの方法は、特許を取得している。