平成30年度の進捗状況

平成30年度事業報告
各年度の事業報告

1.平成30年度の実施目標及び実施計画

平成30年度、エリア防災活動支援技術に関する3つのテーマの研究開発事業の開発目標および計画は、下記の通りである。

テーマ1

オールハザード対応キットのプロトタイプ作成と防災訓練による検証。オールハザード対応キットのプロトタイプを試作し、新宿駅周辺防災対策協議会や避難所運営管理協議会にてアンケート・ヒアリングによる検証・評価を行う。

テーマ2

地域拠点施設の構造・非構造の耐震性能調査と改修モデルの提示、および、大加速度・大変位振動台等による検証。地域拠点施設を対象に、極稀地震と極大地震による地震応答解析を実施し、耐震・制震補強案による構造耐震改修モデルの有効性を検証する。さらに非構造部材(天井・内外装材・設備機器)の実大モデルを製作し、大加速度・大変位振動台を用いて、大地震時の高層建築や体育館における機能継続・早期復旧・費用対効果の視点から耐震性能を調査する。同時に総合的な耐震性評価法と使用継続性能チェックリストのプロトタイプを対象施設に、テーマ1と連携した防災訓練の際に適用し、使用性などを検証する。

テーマ3

D-ZEVのプロトタイプの稼働実験と検証。試作したD-ZEV(本体とD-ZEV mini)の代表的運転モードで稼働させ、運転データとエネルギー消費データを収集整理し、非常通信と情報表示の機能を、テーマ1と連携した防災訓練等に実際に性能を測定し、目標レベルの検証を行う。
一方、社会実装事業としてウェッブページの充実、市民・事業者向けの防災イベント、成果普及キャンペーンを実施し、アンケート調査等による成果の中間評価を行う。

2.事業成果

平成30年度の成果として研究成果報告書を刊行し、Webページに公開すると同時に、2019年3月13日に工学院大学新宿校舎10階1012教室にて成果報告会を開催した。テーマ別の成果の概要は以下の通りである。

テーマ1の進捗報告

オールハザード対応キットのプロトタイプ作成と防災訓練による検証を実施した。すなわち、新宿駅周辺エリアをモデルに、当該エリアで想定される震災・水災を主な対象として、(1)ドローンや情報技術を活用したオールハザード対応のエリア防災計画を作成し、その計画に基づいた効果的な災害対応を可能とするための、(2)現地対策本部や一時滞在施設、避難所などエリア内の災害活動拠点の設営・運営を支援するキットおよび、(3)VR技術も援用し、発災対応型の訓練の企画・実施・評価の一連のプロセスをパッケージ化した訓練キットを開発し、各種地域防災訓練で検証実験を行った。
テーマ1「大都市中心エリアを対象としたオールハザード対応キットの開発」
1-1 大都市中心エリアを対象としたオールハザード対応キットの開発 村上正浩
1-2 認知行動実験,動画像解析による都市災害対応モデルの検討およびVR自衛消防訓練ツールの開発 福田一帆・雨車和憲
1-3 大都市ターミナル駅周辺の建築ストックの防災まちづくりへの転用可能性 藤賀雅人
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テーマ2の進捗報告

地域拠点施設の構造・非構造の耐震性能調査と改修モデルの提示、および、大加速度・大変位振動台等による検証を実施した。すなわち、地域拠点施設として、都心に建つ既存超高層建築における制振補強による費用対効果を地震リスク解析手法による検証し、またドローンによる超高層建築の外装材の劣化診断実験を実施した。さらに、置き屋根式体育館における支承部の実験・解析的研究を行い、従来の日本建築学会の耐力式に修正が必要なことを明らかにした。一方、完成した振動台を用いて、超高層オフィスビルで用いられるシステムライン天井のユニットの動的な振動実験を実施し、効果的な落下防止対策を検討した。
テーマ2「機能継続・早期復旧を可能とする大地震対策建築モデルの開発」
2-1 リスク評価手法を用いた制振補強による費用対効果に関する研究 中西真子・久田嘉章・山下哲郎
2-2 既存超高層建築の地震時損傷評価 中西真子・井口桂織・久田嘉章・ 山下哲郎
2-3 天井実験用振動台を用いたシステムライン天井の動的実験 山下哲郎・岩澤瞭・萱沼賢太郎・ 茂呂浩太郎
2-4 せん断が支配的な置屋根体育館支承部の復元力特性に関する研究 伊藤賢治・山下哲郎・関根諒
2-5 下部構造と支承部の非線形復元力特性を考慮した鉄骨置屋根構造の地震応答解析 渡辺俊也・山下哲郎
2-6 本体建物の振動特性を考慮した大スパン片持屋根構造の地震応答評価 荒井雄大・山下哲郎
2-7 各種都市建築物の非構造部材における性能評価と機能継続に関する研究
-都市高層ビルにおけるドローン外壁劣化度調査と評価システム-
川村順平・田村雅紀・村上正浩・ 金山直司・新藤敦
2-8 各種都市建築物の非構造部材における性能評価と機能継続に関する研究
-都市非住宅用・外断熱タイル張り工法の安全・劣化性状-
鈴木秋人・田村雅紀・相山朋大・ 岡田幸三・堀幸作・高本修一
2-9 各種都市建築物の非構造部材における性能評価と機能継続に関する研究
-外装用・窯業系サイディング廃材を用いた再生仕上げ建材の開発-
栗原良輔・田村雅紀
2-10 各種都市建築物の非構造部材における性能評価と機能継続に関する研究
-木質外装材へのアクリルシリコン系透明保護塗材を用いた退色防止性-
下地啓太・田村雅紀・奈良利男・ 内藤真弘・島袋省三
2-11 各種都市建築物の非構造部材における性能評価と機能継続に関する研究
-木質・植物系屋根に対する高粘度液体による延焼抑止効果-
小清水基貴・田村雅紀・後藤治・ 小林直
2-12 機能継続・早期復旧を可能とする大地震対策建築モデルの開発
~設備施設の耐震性能向上~
西川豊宏
2-13 地表地震断層ごく近傍の強震動特性,および,断層ズレによる建物被害 久田嘉章
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テーマ3の進捗報告

D-ZEVのプロトタイプの稼働実験と検証を行った。すなわち、昨年度開発したD-ZEVでは太陽光発電、集熱器、通信機、サイネージ技術を車両(D-ZEV本体)に組み込み、さらにモバイル通信機器を積んだ自転車であるD-ZEV miniと併せて運用を開始した。新宿駅周辺地域における各種イベントを通じ、テーマ1とも連携してDZEVとドローンを組み合わせた通信機能や消費量測定による要求性能の検証を行った。
テーマ3「エリア防災拠点をつなぐ自立移動式災害対応支援ユニットの開発」
3-1 D-ZEVを利用した環境防災情報伝達システムの構築 中島裕輔・水野修・野呂康宏・ 横山計三・富樫英介・柳宇
3-2 自立移動式災害対策支援ユニットにおける情報提供方式の開発 水野修
3-3 自立移動式ゼロエネルギーユニット(D-ZEV)の電力供給システム 野呂康宏
3-4 簡易救護ユニット空調システムの研究 横山計三・富樫英介・中島裕輔・ 柳宇
3-5 簡易救護ユニットにおける室内浮遊粒子の制御に関する実証 柳宇・富樫英介・横山計三・ 中島裕輔
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広報・普及事業

社会実装事業では、得られた成果を新宿区や新宿駅周辺防災対策協議会、イノベーションJAPANなどの市民・事業者向けの各種防災イベントなどのキャンペーン事業を行い、また防災ポケットマニュアルを作成し、学生によるWSの開催、さらに得られた成果の常設展示を実施した。
詳細(PDF)

3.自己点検・評価、外部評価の状況

以下に自己点検・評価、外部評価の状況を報告する

自己点検・評価

 自己点検・評価として、2018年度研究成果報告書を発行し、公開による成果報告会を2019年3月13日に実施、さらに下記2名の学内委員と研究参画者による自己点検・自己評価委員会を成果報告会と同日に行い、学内委員から下記の評価を頂いた。

学内委員

・総合研究所・旧機能表面研究センター長 鈴木健司 教授(工学部機械システム工学科)
・総合研究所・生体分子システムセンター長 今村保忠 教授(先進工学部生命化学科)
 

評価結果

(→コメントは別紙PDF参照
・非常に良い(優)=A、良い(良)=B、概ね適切(可)=C、改善が必要(不可)=D
評 価 項 目 テーマ1 テーマ2 テーマ3 全体
研究目的の明確性・必要性 A、A A、A A、A A、A
研究実施状況 A、A A、A A、B A、A
研究成果 A、A A、A A、B A、A

外部評価

 本事業の外部評価として2018年度研究成果報告書と成果報告会(2019年3月13日実施)、および、外部評価委員会を行い、下記3名の外部評価委員に評価を頂いた。

外部評価委員(肩書は平成28年度)

・東京大学地震研究所・巨大地震津波災害予測研究センター長 堀 宗朗 教授
 (2019年度より国立研究開発法人海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門長、
  兼任: 数理科学・先端技術研究開発センター長)
・横浜国立大学・大学院都市イノベーション研究院・都市イノベーション部門・佐土原 聡 教授 
・新宿区総合政策部長 平井光雄 氏
 

評価結果

(→コメントは別紙PDF参照
・非常に良い(優)=A、良い(良)=B、概ね適切(可)=C、改善が必要(不可)=D
評 価 項 目 テーマ1 テーマ2 テーマ3 全体
研究目的の明確性・必要性 A、A、A A、A、A A、A、A A、A、A
研究実施状況 A、A、A A、A、A B、A、B A、A、B
研究成果 B、A、B B、A、B B、A、B B、A、B

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