岡健太郎非常勤講師(建築学科)が前田記念工学振興財団 山田一宇賞を受賞

2025/06/12

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岡健太郎非常勤講師(建築学科)が公益財団法人 前田記念工学振興財団の令和7年度(第32回)山田一宇賞を受賞しました。

業績名:木摺り漆喰吊り天井の力学的挙動と持続可能な利活用に向けた健全度評価手法の提案

岡非常勤講師は本学の卒業生で、在学中は建築生産 田村研究室(建築学科、指導教員:田村雅紀教授)に所属し、2024年に博士号を取得しました。
木摺り漆喰吊り天井の修復に関する研究は、岡非常勤講師が大学院生のころから田村教授とともに続けてきました。2021年には、重要文化財に指定されている岩手銀行赤レンガ館の漆喰天井修復にこの技術が採用され、研究室で現地に赴き、協力企業とともに実際に修復工事にあたりました。
2022年4月より職業能力開発総合大学校・助教に就任しており、現在も田村教授とともに本研究を進めています。今後のさらなる展開と社会実装が期待されています。

■100年前の建て築きを次世代へ 岩手銀行赤レンガ館の復原改修工事 #Action

受賞者 岡健太郎非常勤講師 コメント
この度は、名誉ある賞をいただき大変光栄に感じております。建築学部の1期生で、東日本大震災と同じ年に入学した私は、地震対策と建築の緊密な関係性を強く感じておりました。大学3年のころ、田村先生から岩手銀行の木摺り漆喰天井修復に関するお誘いを頂いたのをきっかけに、以降十余年にわたり「天井・非構造部材からみた防災」へのめり込んでゆくことになります。 修士修了後に就職した外装材メーカーでは、非構造部材の耐震工法等に関する開発・設計・施工だけでなく、工学院大学の客員研究員としての活動を続ける機会も与えて頂きました。ある時、再度田村先生から国重要建物の天井耐震診断業務へお誘いいただき、その道を諦めきれずに研究員への転職を選んだ際にも、激励のお言葉と共に送り出して頂きつつ、今でも関係を継続できていることに大変感謝をしております。 診断業務では、これまでの経験を活かしてより確度の高い実験・研究ができただけでなく、得られたデータを用いた博士論文にまで発展させることができました。マニアックなテーマであり課題は山積ですが、社会的なニーズはこれからさらに高まるとみられ、それも相まって今回の評価を頂けたと感じております。これまでご指導いただきました恩師の先生方、研究や学位取得を応援してくださった研究室の皆様、友人、家族、ならびに論文執筆の機会を頂きました現職場の先生方にこの場をお借りして御礼申し上げます。今後も研究および教育の場で貢献をしながら、皆様への恩返しができれば幸いです。

田村雅紀教授(建築学科) コメント
岡健太郎先生は、2011年に建築学部1期生として入学されました。東日本大震災なども重なり自然災害や社会情勢が大きく動いた年ではありましたが、建築学部1年生の学生らを迎えた我々教員は大きな期待を頂いており新たなカリキュラムでスタートした授業でも心躍る気持ちであったことを覚えています。そして1年生の建築材料の授業の後に、早速質問をするために前にやってきた一人の学生が岡健太郎さんでした。そこでの議論に始まり、2年の材料実験、更には3年生のセミナー活動、4年生の卒研、更には岩手銀行の改修を題材とした修士研究など、様々な研究の旅を岡さんとともに行ってきました。その後、建材メーカーで実社会での経験を積まれた後に、再び大学の文化財研究に関わる客員研究員として着任し、現在の大学教員での職を得て、2024年に博士号を取得しております。その一連の研究成果が社会的に評価され、この度の受賞に繋がりました。教員としても、大学1年生の学びはじめの若者が、当該分野で国内髄一の専門家になるまでの道程を、研究を通じて共に歩めたことは何よりも代えがたい至宝の教育経験であり、これからの建築業界の支えるリーダーであり、確かな人材の礎になることを多いに期待したいと思います。

建築生産 田村研究室