電気安全研究室の研究成果がIEEEの英文論文誌に掲載されます

2021/06/29

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木村浩大さんが電気安全研究室(市川紀充准教授)の卒論生のときに実施した以下の研究成果が、米国電気電子学会(IEEE)の査読付き英文論文誌のIEEE Transactions on Industry Applicationsに掲載されます。現在は、Early Access版として学会ホームページで公開されております。

Norimitsu Ichikawa, Hiroki Kimura, Petru Notingher, Nicholas Paulter, "Electrostatically induced voltage in metal box when charged object like hand moves away from the box to three directions," IEEE Transactions on Industry Applications (2021), DOI: 10.1109/TIA.2021.3092707. (https://ieeexplore.ieee.org/document/9465769

本論文は、次のような概要です。静電気は、コピー機等に利用されている役に立つエネルギーといえるが、電子機器の誤動作や故障の原因となる。マイクロエレクトロニクス化された電子部品は、10 V以下の瞬時電圧で誤動作や故障を引き起こす。人体等の帯電物体が電子機器の金属筐体や導電性筐体の近くにあるときや、その帯電物体が筐体の近くを移動するとき、静電誘導が原因で電子機器内に静電誘導電圧が発生する。

人体等が相対湿度の低下した室内を動くと、人体等は静電気が原因で帯電する。帯電した人体の電圧は、エアコンを使用した室内で10 kV程度になり、室内の相対湿度が低下すると約40 kVになる。帯電した人体等の帯電物体が電子機器の金属筐体に近づくと、筐体内に生じる静電誘導電圧が原因で、電子機器の誤動作や故障を引き起こす。この種の静電誘導電圧が原因で起こる電子機器の誤動作や故障の問題は、場当たり的な対策では解決が難しく、電子機器設計に指針を与えることが求められている。

非接触の静電容量型のデバイスの使用が増えると、静電誘導電圧が原因で起こる電子機器の誤動作や故障が増加する可能性がある。その理由は、電子機器の金属筐体内に生じる静電誘導電圧は、各導体間の静電容量の結合で生じるからといえる。例えば帯電した人体の手が開口部のある金属筐体に近づいたときや、筐体から遠ざかるとき、筐体内の導体には静電誘導電圧が生じることになる。

本研究では、帯電した人体の手を模擬した帯電物体が前面が開口した金属筐体から遠ざかるとき、筐体内に生じる静電誘導電圧を実験研究で明らかにした。実験では、帯電物体を金属筐体から左方向、右方向、後方の三方向に移動させたとき、筐体内に生じる静電誘導電圧をスパークギャップと電磁波センサを用いて明らかにした。本研究成果は、電子機器の金属筐体内に生じる静電誘導電圧が原因で起こる電子機器の誤動作や故障の防止に役立つと思われる。

電気安全研究室の卒論生の研究成果は、研究室の成果として、電気学会論文誌DやJournal of Biomedical Systems & Emerging Technologiesなどの国内外の査読付き論文誌で複数編発表されております。

電気安全研究室