巨大ブラックホールの「自転」を示す新たな証拠を発見

2023/09/28

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紀基樹 客員研究員(教育推進機構)が参加する国際研究チームは、東アジアVLBIネットワーク(East Asian VLBI Network: EAVN)をはじめとする観測装置を用いて、楕円銀河M87の中心から噴出するジェットの運動を詳しく観測しました。過去20年以上にわたって得られた多数の画像を分析しまとめた結果、ジェットの噴出方向が約11年周期で一般相対性理論が予言する歳差運動(首振り運動)をしていることを発見しました。本成果は、M87の巨大ブラックホールが自転(スピン)していることを強く示すとともに、強力なジェットの発生にブラックホールの自転が深く関与していることを裏付けるものです。研究成果は、英国の科学雑誌『ネイチャー』に2023年9月27日付で掲載されました。

詳細は、下記PDFおよびリンクをご覧ください。

  • 自転する巨大ブラックホールの周りで歳差運動(立体的な首振り運動)する降着円盤とジェットの想像図。ブラックホールの自転軸は図の南北方向に固定されている。ブラックホールの自転軸に対して降着円盤の回転軸が傾いていると、一般相対性理論の効果によってこのような歳差運動が生じる。画像クレジット:Cui Yuzhu et al. (2023), Intouchable Lab@Openverse and Zhejiang Lab.
【プレスリリース】歳差運動するM87ジェットの噴出口 – 巨大ブラックホールの「自転」を示す新たな証拠 [1.27MB]
紀基樹 客員研究員(教育推進機構、EAVN活動銀河核サイエンスワーキンググループ世話人)コメント

私たち研究チームは、観測を長期間継続することの重要性を早くから見抜き、2013~2022年の間にEAVNで合計123回という高頻度の観測を実行し、初めて周期的な動きを捉えました。 今回発見された11年周期の歳差運動はシンプルな現象ですが、ブラックホール近傍のガスの複雑な物理状態について多くの情報を含んでおり、今後さまざまな研究が進むことが期待されます。私たちも、今回得られたジェット歳差の動画と、今後EHTによって得られると期待されるブラックホールシャドウの動画を詳細に比較することによって、宇宙物理学に残された未解決課題「ブラックホール自転速度の計測」と「ジェット発生メカニズムの解明」に挑みます。

国立天文台
EHT-Japan

取材に関するお問い合わせ 学校法人 工学院大学 広報課
担当:堀口・森川
E-mail: gakuen_koho[at]sc.kogakuin.ac.jp
TEL: 03-3340-1498