工学院大学の紀基樹 客員研究員(教育推進機構)が参加するイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)コラボレーションおよび多波長の観測グループからなる国際研究チームは、M87中心部から強力なガンマ線フレアを捉えることに成功しました。
本成果はM87の巨大ブラックホールが約10年ぶりの活動期を迎えたことを示すとともに、超高エネルギー電磁放射の発生メカニズム解明に手がかりを与えるものです。研究成果は欧州の天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジクス』に掲載されました。
楕円銀河M87は、おとめ座の方向約5500万光年の距離にあり、その中心には、EHTが史上初めて撮影に成功した巨大ブラックホールが存在しています。2017年に観測を開始し、2017年観測時点は、M87のブラックホールが非常に「おとなしい」状態と発表されてました。
今回の発表は、2018年に行われた合同観測の分析成果で、M87の中心部から強力なガンマ線フレア(ガンマ線において短い期間だけ明るく輝く現象)を検出することに成功しました(図1)。これは2017年とは対照に、活動期であることを示しています。
観測には、世界の各国から17を超える観測装置が参加。国立天文台水沢VLBI観測所が韓国・中国などと共同で運用する東アジアVLBIネットワーク(EAVN)は、ガンマ線フレアの発生時期におけるジェットの形状などを詳しく測定しました。EAVN観測をとりまとめた工学院大学教育推進機構の紀基樹客員研究員は「ジェットの噴出方向、 EHTで観測されるリングの輝度分布、ガンマ線活動の3つの要素について、今後さらに長期的な時間変化を観測し、それらを組み合わせて分析することで、超高エネルギー放射発生メカニズムの理解が大きく進展するでしょう。」とコメントしています。