教育推進機構基礎・教養科ナノ化学研究室(指導教員:高見知秀教授)に所属する化学応用学専攻1年吉澤深玖さんらのグループは、王水など危険な溶液を用いないで、塩水に金を溶かす方法で、都市鉱山と言われる使用済み家電製品や携帯電話から金を回収する方法を開発しました。
論文名:Production of chloroauric acid from electronic waste in salt solution by AC electrolysis | Gold Bulletin
金は高価な金属であり、その抽出方法や回収方法には様々な歴史があります。身近にある携帯電話には金が約48ミリグラム含まれており、国内の使用済み携帯電話から金が全て回収できたと仮定すると、年間で約80億円分の金が回収できる試算となります。しかしこうした金の回収には従来、劇物である王水が用いられています。
そこで吉澤深玖さんらのグループは、従来用いられている王水を使用せず、塩水や海水に交流電気分解法を用いて金を溶解させる方法を開発しました。この手法を応用することで、金を廃棄された携帯電話や電子基板などの都市鉱山から回収することができ、回収の際の環境への負荷を大幅に軽減することができます。
バイポーラ交流電解を利用したこの方法は、電子廃棄物から金を抽出する際にも有望な手段となり、環境負荷の低減に寄与する可能性を示しています。現在、実際の電子基板を用いた実験を行い、回収効率の向上を目指して研究が続けられています。
今回の研究成果は、学術雑誌「Gold Bulletin」に掲載されました。