7月31日(木)、8月1日(金)に開催された「第40回 建築生産シンポジウム」(主催:日本建築学会)にて、建築学科卒業生の徳永将貴さん(建築生産 岩村研究室 出身)が若手優秀発表賞を受賞しました。
発表論文:階層化された仕様コスト情報を用いた効率的なVE手法とBIMの連携
建物の設計では、外観や間取りだけでなく、どのような材料を選ぶかも重要です。壁や床、窓、設備など、建物に関するすべての部材、機器について、使う材料・機器を選ぶ必要があります。材料や機器の性能は高いものから低いものまで多種多様で、何を選ぶかで値段も大きく変わります。一つ一つ選んでいく中で、全数を選んだ後に値段の合計を計算すると合計⾦額が予算を超えてしまうこともあります。その場合にはコストを抑えながら品質を担保する調整作業が必要になり、これをVE(バリュー・エンジニアリング)と呼びます。 VEの判断は、従来はベテランの経験に大きく依存してきました。
今回発表した論文は、AIを活用して仕様選定やVEを効率的かつ適切に行う方法の検討と、ベテランの知識を若手へ伝承する仕組みづくりに取り組んだものです。 BIMデータから外壁の仕様や属性情報を抽出し、過去のVE事例とともにRAG技術*を用いて汎用AI(本論文では、ChatGPTを使用)と連携することで、プロジェクトに最適なVEを選定する仕組みを提案。コストや採用実績を基に選定を行った結果、従来よりも効率的にVE選定が可能であることを確認しました。今後は外壁以外の部位への適用や、形状を変更した際の対応、VE以外のノウハウを使用した比較検討業務への活用を目指します。
*RAG技術:AIが元から持つ出所が不明瞭な情報だけでなく、入力されたプロンプトに適した情報をリアルタイムに外部から検索して、それらを基にAIに回答を生成させる手法
受賞コメント
学生時代に力を入れて取り組んだ成果が、このような形で評価されたことを大変嬉しく思うとともに、岩村先生をはじめ多くのご指導をいただいた方々への感謝の気持ちでいっぱいです。
研究では、ただの一学生のアカデミック的な研究で終わるのではなく、いかに建築業務の現場に組み込めるかを意識して取り組みましたが、今回の結果もそうした視点が一因となったと考えております。
今後もBIMをはじめとする日々進化する情報処理技術を活用し、建築生産プロセスの効率化を実務に即した形で推進していきたいです。