1月12日に新宿キャンパスで、本学卒業生の藤本幸人氏(元 本田技術研究所 エグゼクティブチーフエンジニア/1981年 機械工学科卒)による特別企業セミナーが開催されました。学部1年生から大学院生まで、約50名が参加しました。
本田技研工業は日本を代表する自動車会社として知られ、ロボットや航空機などの分野でも常に新しい製品を生み出し続けるグローバル企業です。多くの本学卒業生がエンジニアや経営層で活躍しています。
藤本氏の講演では、NHK番組「プロフェッショナル仕事の流儀 夢を語れ、不可能を越えろ」出演時のエピソードも交え、モノづくりのプロとして仕事をするうえで必要な心構えが伝えられました。
藤本氏の信念は、困難を楽しむこと。「人に感動を与える商品、技術が世界を変えていく。世の中を動かすには感動が必要」と考え、世界一、世界初の燃料電池自動車 開発プロジェクトに責任者として携わりました。 技術者には忘れてはいけない心得があり、世界初、世界一の夢にこだわること、技術の前では上下なく誰もが平等であること、技術は世の中を豊かにするために進化し続けるべきもので、満足したら技術進歩は止まってしまうことだと語りました。
長年開発責任者を務めた経験から、リーダーとしての心構えも説明しました。1つの車は何万点もの部品と専門技術が集まってできていることを例に挙げ、自分1人の知識だけでは、小さいモノしか生まれないことを示しました。リーダーができることは、チームの力を信じて目標と夢を共有し、決断することだと述べました。
「結果はチームのため、過程は自分自身のため。夢や思いは形にして、結果を出してこそ初めて意味がある。成果に対して報酬を受け取るサラリーマンは究極のプロである。その自負をもって戦い、新しいものを生み出してほしい」と、100年に一度の大変革期を迎えるモビリティ業界を目指す学生たちへエールを送りました。
玉川雅之特任教授の進行のもと、出席した学生達からも、高い技術力と生産性の両立や、夢を実現する方法など、多くの質問が寄せられました。藤本氏は、「コストも技術である」「要件(目標)を決めて、自分の足元に来るまでブレイクダウンすることが大事。書き出してみると良いのではないか。」と、長年の経験を踏まえて回答しました。
当日は、元本田技研工業で法人営業日本責任者を務めた久慈英樹 常勤監事(1977年 化学工学科卒)と、尾崎大典さん(2019年 機械理工学科卒)も同席しました。尾崎さんからは、現在携わっている新機種のドアの設計現場の紹介や、自分の夢に立ち返って思いを確かにする大切さが伝えられました。久慈監事は、本田技研工業は自動車会社ではなくモビリティ企業であること、また、2050年には世界の自動車保有台数が3倍になると予想される中で、地球温暖化問題など、環境に配慮した新技術による解決が求められていることを語りました。
企業経営や開発現場のトップで活躍したゲストを迎えた本セミナーを通じ、学生達は、プロとしての仕事への向き合い方と、モノづくりに大切な想いを考える機会となりました。