本橋隼人准教授(教育推進機構 基礎・教養科)が第一回AAPPS-JPS Awardを受賞
2023/10/03
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本橋隼人 准教授(教育推進機構 基礎・教養科)が第一回AAPPS-JPS Awardを受賞しました。
AAPPS-JPS Awardは、卓越した研究成果を挙げている若手研究者の功績をたたえ、アジア地域の物理学振興を目指すため、アジア太平洋物理学会連合（Association of Asia Pacific Physical Societies, AAPPS）と日本物理学会（The Physical Society of Japan, JPS）が共同で、2023年度より創設した賞です。9月18日に、東北大学にて開催された日本物理学会 第78回年次大会(2023年)にて、第一回AAPPS-JPS Awardの表彰式が行われました。
本橋准教授の受賞対象となった業績は「整合的なスカラー・テンソル理論の構築及び新しい重力現象の探求」です。
スカラー・テンソル理論とは、重力の標準理論であるアインシュタインの一般相対性理論にスカラー場を付け加えて拡張した重力理論です。これまで多種多様なスカラー・テンソル理論が提唱され、インフレーション、ダークマター、ダークエネルギー、統一理論など、様々な文脈で研究されてきました。本橋准教授はこのような拡張重力理論における物理的自由度が持つ性質に着目し、性質のよい整合的な理論を構築する系統的な方法を確立することに成功しました。また、アインシュタイン方程式と同じ時空計量を持ちながら非自明なスカラー場の配位を持つ「ステルス解」と呼ばれるクラスの厳密解の存在条件を突き止めました。さらに、このような解における摂動論は一般に強結合と呼ばれる性質を持つことを明らかにするとともに、高階微分相互作用の導入により強結合を回避する「スコルダトゥーラ」と呼ばれる方法を開拓しました。
本橋准教授はこの他にも、宇宙初期に起きたインフレーションについて一連の研究を行なっており、理論模型の提唱、解析手法の開発、原始ブラックホール生成に関する研究などにおいて重要な貢献をしてきました。このように多岐にわたる分野で成果を挙げている点が高く評価され、第一回AAPPS-JPS Awardの受賞に至りました。
本研究の一部は、科学研究費補助金 新学術研究「重力波物理学・天文学：創世記 重力波物理学・天文学における重力理論研究の新展開」JP17H06359、若手研究「高階微分重力理論の検証」JP18K13565、基盤研究(C)「多様なブラックホール観測に向けた理論的研究」JP22K03639 の助成を受けて実施されました。
これまで行なってきた研究がこのような評価を受け、大変光栄に思います。共同研究者や同僚をはじめとする多くの研究者の皆様と、私の研究生活を様々な面で支えてくれた家族のおかげで、これまでの研究を行うことができました。ここに感謝いたします。
近年の重力研究は理論・観測の両面において目覚ましい発展を遂げており、重力波やブラックホールの性質が少しずつ明らかになるとともに、新たな課題や謎も見つかっており、非常に興味深い局面を迎えています。我々の宇宙の理解を推し進める面白い研究を積み重ねていけるよう、今後もより一層精進してまいります。
■アジア太平洋物理学会連合（Association of Asia Pacific Physical Societies, AAPPS）
1989年にアジア太平洋地域の物理学振興を目的として設立された学協会連合です。現在、20カ国・地域の21学協会が加盟し、研究、応用、教育を通じて物理学を振興しています。主な活動として、アジア太平洋物理学会議（APPC）の開催と、会報AAPPS Bulletinの出版を行っています。
■一般社団法人 日本物理学会（The Physical Society of Japan, JPS）
約16,000名の物理学の研究者・教育者・技術者を擁する、歴史ある学会です。世界の物理学会と相互協定を結び、同等の資格での活動参加を実現しています。さらに、アジア太平洋物理学会連合(AAPPS)のメンバーとして、物理学の国際協力を推進しています。