11月19日に行われた「歴史的空間再編コンペティション2022」において、工学研究修士課程 建築学専攻 大学院1年の馬場琉斗さん(冨永研究室)が、グランプリ(最優秀賞)を、同1年の東條巧巳さん(冨永研究室)が模型部門賞(第4位)を受賞しました。
歴史的空間再編コンペティションは、全国に存在する歴史的空間を再編しようとする設計作品を対象としています。「歴史都市・金沢」に全国の学生が集い、競い合い、学び合うことにより、歴史的空間のストックを見つめ直し、新しい価値を生み出すことが目的です。
研究題目(馬場琉斗さん) 東京浸透水域
馬場さんの受賞作品「東京浸透水域」は、背景にある東京の歴史を再編した土木インフラに疑問を持ち、かつて海に沈み、そして田園風景が広がっていた田端駅周辺の山手線沿線に人間と自然とが共存した空間を設計したものです。この設計では大地へ浸透を促進する要素を根拠に斜面上を設計し、人々と土木との関係を再構築し、線路バラストが現代の浸透しない川の代わりに都市を潤すように新たな関係として再編しました。
建築家・塚本由晴氏からは「土木をただ固めるだけではなく生態的な評価からインフラを再編する視点が良い」、中川エリカ氏からは「この擁壁が人々と手を取りながら風景が広がるものであることが評価できる。」など評価されて高得点を収め、最優秀賞にあたるグランプリを受賞しました。
ここまでずっと支えてきてくださったすべての方に感謝申し上げます。
この貴重な経験を糧に今後とも精進していきたいと思います。
研究題目(東條巧巳さん)
記憶蘇生、水都バンコク復活 - タイ国鉄フアランポーン駅コンバージョン計画 -
東條さんの作品は、1916年に開業したバンコクの中央駅が廃止となることを踏まえた、駅のコンバージョン計画です。ヨーロッパの駅舎とは異なる特徴を有するこの駅が、106年ものあいだ地域住民の生活の場であったことを歴史的空間と捉え、現在の都市が抱えている問題「運河の水質汚濁」を解決する拠点へ再編した提案です。下水処理設備を挿入し、タイ人の寛容な性格を生かした活動と掛け合わせることで、処理設備と住民が共生していく施設を設計しました。
審査員からは「過去から未来までを考え、都市の発展に寄与した鉄道駅を歴史から切り離すことなく、タイらしさを引き立てながら都市のために必要な施設へ再編している」という点が評価され、総合4位の成績を収めました。
さらに、二次審査に選出された30作品の中から、模型表現の細やかさを評価され「模型部門賞」を受賞しました。