11月23日、長野県駒ケ根市の赤穂公民館ホールにて、工手學校(工学院大学の前身)卒業生の建築家・伊藤文四郎の功績を振り返る記念講演会を開催しました。本イベントは長野日報でも紹介され、講演会当日は多くの方が来場しました。
伊藤文四郎(1882-1966)は長野県東伊那村(現駒ヶ根市)出身の建築士です。工手學校で学び、日本国内で働いた後アメリカに渡り建築家資格を取得。帰国後は、近代コロニアル様式を取り入れた洋風建築物を設計し、旧帝国ホテルや日本郵政ビル、東京帝国大学図書館など、数々の建築に携わりました。
数年前に発見された資料からは、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが、旧帝国ホテルの設計・建設時に建築家の遠藤新とともに撮影した有名な写真に写っていることも明らかになりました。
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フランクロイドライトと撮った写真について解説する香川浩先生(右端が伊藤文四郎)
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赤穂村役場とアメリカ建築の共通点を解説する藤森照信先生
講演会には本学特任教授・藤森照信先生と、本学卒業生の建築家・香川浩先生が登壇しました。
藤森先生は、伊藤文四郎が設計した赤穂村役場庁舎(現駒ヶ根市郷土館)について解説。パラディアニズムと呼ばれる建築様式が取り入れられた、大正期の村役場としては珍しい例であり、東京での仕事の傍ら地元の村役場の設計も手掛けた伊藤の、地元への深い思いが感じられると説明しました。
香川先生は、伊藤文四郎と工手學校の関わりについて解説。アメリカから帰国後の仕事には、工手學校時代の人脈が活かされていると考えられることや、今回発見された資料の中には工手學校 学生時代の製図課題もあり、指導教員とのやり取りの中から伊藤の性格が垣間見える点を説明しました。
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旧赤穂村役場 一階の玄関ホール
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特徴的なパラディアン・ウィンドウ
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玄関出入口
伊藤文四郎は晩年、勲5等旭日双光章を受章。設計した赤穂村役場庁舎は移築され、駒ヶ根市郷土館として保存されています。工手學校を卒業し明治から昭和の激動の時代に活躍した建築家として、その功績に改めて注目が集まっています。