0.1秒の頬のうごきの遅れが、顔の魅力度に影響

2020/11/19

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工学院大学博士課程学生が日本心理学会大会で優秀発表賞を受賞

工学院大学(学長:佐藤 光史、所在地:東京都新宿区/八王子市)の情報学専攻博士課程2年生でポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)の研究員を務める黒住元紀さんが、日本心理学会第84回大会において優秀発表賞を受賞しました。これまでは静止した顔の研究が多数すすめられてきましたが、時間を伴う「動き」に着目した研究で、よりリアルな顔の「魅力」の根源に迫りました。

  • 試験時に提示した顔モデル(動作:無表情から口を大きく開ける) ©2020 ポーラ化成工業
【プレスリリース】0.1秒の頬のうごきの遅れが、顔の魅力度に影響 [272KB]

発表タイトル
頬の運動の遅れが視覚知覚に及ぼす影響
発表者
黒住 元紀  工学院大学大学院 情報学専攻博士課程2年
ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター
蒲池 みゆき 工学院大学 情報学部教授(認知情報学研究室)
研究概要
従来の研究では、顔を動かした際、加齢により頬の肌が遅れて動くことが解明されていました。
この現象が顔の印象に与える影響について詳細に調べるため、顔の動きを表すモデルを被験者に提示する試験を行った結果、以下の2点が新たに解明されました。
  1. 物体の動きにおいては気づきにくい0.1秒程度のごく僅かな遅れであっても、人の顔に生じる場合には感知されやすくなる
  2. わずか0.1秒の遅れが頬部に生じると顔の魅力度が低下する
私たちの普段のコミュニケーションにはさまざまな動きや表情が伴います。特にwithコロナでビデオ会議などが当たり前となった今、画面に映された相手の顔のみが見えるということも増加しています。動いている顔を人がどのように認知し、どのような印象を受け取るのかを明らかにする研究は、今後ますます重要になると考えられます。
試験方法
モーションキャプチャで取得した10名の日本人女性の顔モデルをもとに頬の動きを加工し「遅延なし/遅延あり」の2種類、合計20種類の顔モデルを作成。作成した顔モデルを25名の日本人男女が「魅力的である/魅力的でない」で評価した。「魅力的である」の選択率を「遅延なし」と「遅延あり」それぞれについて算出したところ、遅延ありの場合において魅力度の低下がみられた。

取材に関するお問い合わせ 学校法人 工学院大学 広報課
担当:松本・樋口・堀口
E-mail: gakuen_koho@sc.kogakuin.ac.jp
TEL: 03-3340-1498

参考

ポーラ化成工業株式会社について

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担います。フロンティアリサーチセンター(FRC)では、新規有効成分の開発や化粧品の枠を超えた新価値創出を担うなど、新規・ 既存事業へ活用するシーズを創出しています。

工学院大学 黒住さんらの共同研究は6年前より開始。日本化粧品技術者会研究討論会で最優秀発表賞受賞(2015年)、世界的に権威のある化粧品技術者学会でも発表を行う(2018年)など精力的に研究をすすめています。

日本心理学会および優秀発表賞について

日本心理学会
心理学の進歩普及を図ることを目的として1927年(昭和2年)4月7日に創立された全国規模の心理学の総合学会として最も歴史のある学会です。基礎領域から応用領域まで広い専門領域にわたった会員を擁し、日本の心理学の発展に貢献してきました。2019年3月末現在の会員数は7,882名となっています。

優秀発表賞
学術大会の一般研究発表のうち優秀と認められたものが選出されます。今回の表彰は、日本心理学会第84回大会(2020年9月8日(火)~11月2日(月)、ウェブ開催)で審査対象となった発表562件を対象に、役員ならびに学術大会委員会委員の投票によって審査されました。13件に特別優秀発表賞、36件に優秀発表賞を授賞。

認知情報学研究室 指導教員:蒲池 みゆき 教授

人のコミュニケーション活動における情報処理機能を理解するための研究を推進。目や耳といった身体器官のしくみや脳機能を理解するとともに、心理物理学的アプローチに基づき、「人間の情報処理」の解明に取り組んでいます。

主な研究テーマ 顔や声の知覚認知過程の研究
ロボットやコンピュータグラフィックスによるインタフェース評価の研究
認知情報学研究室
顔の魅力も、お化粧も、情報学。