建築デジタル教育 特別講演会を開催しました

2023/04/28

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3月29日に建築学部「デジタルツインラボを活用した建築デジタル教育」に関する講演会が新宿キャンパスで行われました。建設業界の第一線でDXを牽引する3名の登壇者にご講演いただきました。多くの建築学部生が参加し、関心の高さがうかがえました。

最初に、BIMライブラリ技術研究組合 専務理事/一般財団法人 建築保全センター理事 寺本英治氏に、海外の事例を交えながら国内における建設DXの推進状況についてお話しいただきました。建設DXの要となるツールの一つが、コンピュータ上の3Dモデルで設計から施工、維持管理、解体に至るまでの情報を一元管理する「BIM(Building Information Modeling)」です。国内で本格的にBIMが普及し始めたころから、寺本氏は標準的なルール策定、作業効率化を図るためのBIMライブラリの構築・運用、組織を超えた円滑な情報連携の実現に、業界の最前線で取り組まれてきました。
国際的な成功事例を挙げながら、建築確認の電子申請時のデータ活用や仕様書などの外部データとの連携、設計から維持管理、解体まで建築ライフサイクルにおけるBIM活用など、日本の建設業界におけるBIMの可能性と将来像が紹介されました。業界には様々な規模、経営体制の企業がありますが、BIMの利用環境を整えていくことで、組織を超えたより円滑なコラボレーションを実現することが様々な事例を交えて伝えられました。

次に、日本建築家協会 BIM特別委員会 委員長/株式会社日本設計 副社長を務める岡本 尚俊氏に、同社のDXに関連する取り組みをご紹介いただきました。日本設計は、建築から都市デザイン、環境計画まで、都市・建築づくりの総合パートナーとして、様々な事業を手掛けています。講演では、企業風土や組織体制、同社の様々な建設事例をお話しいただきました。
設計におけるデジタルツールの活用、水流、温熱、日射などの環境シミュレーションなど、実際の事例を挙げながら、設計・建設現場におけるDX推進状況を、学生たちにも分かりやすく解説していただきました。日本の建設業界において、DXは発展途上の段階であることが言及され、「標準的な部材の情報をデータベースとして蓄積していくことで、膨大な情報の入力作業が軽減され、効率化につながる」とBIM活用の今後の展望が語られました。参加した学生たちに向けて、社会に出てからデジタルツールに苦手意識を持たないよう、大学の授業や研究活動の中で慣れ親しんでおいたよいとアドバイスが送られました。

最後に、建築確認におけるBIM活用推進協議会事務局/日本ERI株式会社BIM推進センター 関戸有里氏から、「建築手続きにおける電子申請」についてお話しいただきました。建物を建てるためには、建築基準法で定められたルールを守らなければいけません。コロナ禍を経て、近年は建築確認申請手続きの電子化が進んでいます。さらに、BIMなどデジタルツールのデータを上手く活用することで、申請のさらなる効率化が目指されていることが話題に上がりました。建設業界で働くと、誰もが避けて通れない建築手続きについて、第一線で活躍されている方から話を伺う貴重な機会になりました。

講演後には、参加した学生・教員から国内、海外のDX推進における違いや建築確認手続きへのBIM活用など、多くの質問が寄せられました。講演を通じて、日本におけるDX推進状況からその将来像まで、最前線の現場をリアルに知ることができる機会となりました。

急加速する産業DXに対応 建築学部のデジタル教育