withコロナの授業に求められることは?

withコロナの授業に求められることは?

先生×学生座談会#2
2021 / 02 / 10

工学院大学は、2021年4月からキャンパスでの対面授業を実施し、授業の内容に応じてはオンライン(遠隔)授業を効果的に取り入れる方針です。激動の2020年の経験を十分に活かし、安全で楽しいキャンパスライフの実現に向けて日々準備を進めています。

学園広報サイト「窓」では、コロナ禍で大きな変化が生じた大学の授業を特集しています。今回は、その第2弾。2020年度ベストティーチャーの表彰を受けた相川慎也先生(電気電子工学科)、先生の授業を受講している1年生2名、2年生2名とともに今年度の授業や学生生活について改めて振り返り、次年度に向けての意気込みを語ってもらいました。
※工学院大学では、学生が受講した授業を全てアンケート評価しています。学生からの感想や教育効果が優れている教員を、毎年2名表彰する制度がベストティーチャー表彰です。
相川先生は研究室、学生たちは自宅からZoomで参加

"何も変えない"努力

工学院大学では、夏期以降は一部で対面授業を再開しましたが、相川先生が2020年度に担当した授業は、すべてオンラインでの実施でした。
オンライン授業をする上で、意識したことや大変だったことはありますか?


相川先生:"何も変えない"ことを意識しました。変えないというのは、普段の教室の授業では聴覚や視覚以外で得られる情報もたくさんあると思います。それらを、オンライン環境でもできるだけ得られるよう工夫しました。
学問の基本は対話からだと考えていますから、学びを深める上では、他者と意見交換できる場が必要ですよね。オンライン授業の中では難しいので、CoursePower内の掲示板を使って、学生たちが自由に学び合ったり、教え合ったりできる環境を用意しました。みんな、課題について質問し合ったりしていましたね。基本的には学生たちに自由にやってもらっていて、たまに僕が発言して軌道修正することもありました。
※工学院大学の学修支援システム。授業資料の共有・出席管理・小テスト実施・レポート提出など、オンライン授業に必要な様々な機能が備わっています。

相川先生:特に1年生後期の「エネルギー・環境倫理」は、技術者としてエネルギーや環境資源に対する倫理観を育てる授業でした。答えが一つに決まっている訳ではなく、自分の意見を論理的に説明すること、他者の意見を尊重し互いに理解し合うことが大切な授業です。掲示板でコミュニケーションの場を用意することで、オンライン授業になったからといって、こういった機会が損なわれないようにしました。

1年生:実際にオンライン掲示板を使いました。授業の中で疑問に思ったことを書き込んでみたら、クラスメイトからいろんな意見が返ってきました。自分にとっては新鮮な意見もあって、同じ物事についてでも人によっていろんな見方があるんだなとびっくりしました。
「エネルギー・環境倫理」の掲示板で学生たちが意見交換

相川先生:学生に理系に進んだ理由を聞くと、「数学や物理は答えが一つに決まっていて、わかりやすい」という人が多いけれど、社会に出ると答えが一つに決まっているなんてことはほとんどありませんよね。4年生の卒業研究も同じで、正解は決まっていません。いろんな考え方、やり方があることを、1年生の段階から経験として知っておくのはいいことだと思います。
掲示板の運用はまだまだ改善点もあり……、学生たちからフィードバックをもらって、次年度に活かそうと思っています。

相川先生:あとは、授業時間外にGoogle Meetを使った質問や相談の場を用意しました。授業についての質問はもちろん、大学生活で困っていることを聞いたり、進路についての相談に乗ったり。コロナ禍で不安を抱えている学生も多く、少しでもアドバイスできればという気持ちがありました。
※工学院大学がオンライン授業システムの一部として導入しているビデオ会議サービス
Google Meetで書き込みながら演習問題を丁寧に解説
2年生:Google Meet、たくさん使わせてもらいました!先生と雑談も結構して、今期受けた授業の中では、先生との距離が一番近かったなって感じています。

神授業への道はトライ&エラー

授業資料で工夫したことはありますか?

相川先生:授業資料自体は、例年の内容から大きく変更していません。ただ、学生たちの集中力が続き、ストレスなく受講できるように、無駄をできるだけ省くことを心がけました。パワーポイントの資料に、音声を吹き込むのですが、録音と編集には、授業時間の3倍以上をかけました。
無音が続く部分や「えー」とか「あー」とか不要な音声を削除するなど、聞きとりやすいように心がけました。

1年生:先生の授業に無駄がないのは、受けていて本当に実感しました。とても授業内容に集中しやすかったです。一つだけ伝えるとすれば……、授業資料は動画だけでなく、パワーポイントでももらえると復習しやすいです。それ以外は本当に神授業です!!

相川先生:たしかに、動画だとちょっと復習しにくいね。オンライン授業では、いろんな環境で受講している学生がいるので、どの方法がみんなにとってベストか、今も実験中です。

2年生:授業の要所要所で、都度小テストのような自分たちで考える時間を挟んでくれて、理解が深まりました!
「エネルギー・環境倫理」の授業資料。身近な電気機器を例に出して、生活の中での二酸化炭素排出量を実感してもらうことが狙い
先生は、後期に2年生「電気電子工学実験II」を担当されていました。実験授業をオンラインで実施するのは難しい試みだったかと思いますが、いかがですか?

相川先生:オンライン授業では実験の様子を動画で撮って学生たちに観てもらい、レポートにまとめてもらいました。ただ、やはりこの手の授業は、実際に実験機材を使ってみて得られる情報も多いと思います。そこで、希望者には2週にわたって、対面で補習を行いました。延べ約20人の学生が、補習に参加し、実際に装置を使って作業を行いました。本当はもっと希望者がいたのですが、コロナ禍ではなかなか大学に来られない学生もいて、難しいところですね。
「電気電子工学実験II」のオンライン授業で使用された実験動画
2年生:実験って、先生に手順や実験の目的を伝えられて学ぶのはもちろんだけど、自分たちが実際に作業をする中で新たな発見とか学びがあると思っています。補習授業に参加してよかったです!

相川先生:すごく楽しみにしてくれていたよね(笑)みんなの反応を見て、やってよかったと思ったよ。

参加してくれた学生たちと、とてもフランクに話をする相川先生。座談会の所々で学生たちに意見や感想を求め、「厳しい意見も歓迎だよ」と声をかけていました。学生たちに寄り添い、教育者として常に学び続ける姿勢が伝わってきます。

コロナ禍の一年を振り返る

相川先生:今年は、対面授業がないから、例年と比べて学生からメールで質問や相談をされることが多かった。きちんとしたメールを送ることがなかなかないだろうから、いい機会になったんじゃないかな。1年生たちは、大学生活で困ってしまったとき、どうやって乗り越えた?

1年生:僕は物理に苦手意識があって……。学習支援センター がオンラインで補習してくれたので、ほぼ毎週お世話になりました。オンラインでのやり取りは、最初は分からないことが多くて勇気が必要だったけど、続けていくうちにためになることを実感しました。

1年生:僕は、SNSで同じ学科の1年生と仲良くなり、今もテスト対策グループとして、分からない問題を相談したり、連絡を取り合っています。相川先生の授業では、オンライン掲示板もよく使いました。

相川先生:春に新入生たちと面談したときに、みんながSNSやコミュニケーションアプリでつながっていると聞いて、デジタルネイティブ世代だなあと実感しましたね。

オンライン授業中心の大学生活、どうでしたか?

1年生:僕は前期・後期どちらも、すべてオンラインで完結できるよう時間割を組みました。家から八王子までは少し時間がかかるので、通学しないことで、自分の時間が増えました。前期は寝ていることが多かったですが(笑)、最近はペースをつかめて、勉強や委員会活動・アルバイトに加えて、トレーニングも始めました。

1年生:後期は、1限に対面で実施している体育の授業を履修しました。早起きして登校して受けましたが、次にオンラインの授業があるから、急いで自宅に戻って授業を受けないといけなくて……。体育の授業が終わったらすぐに友達と別れなきゃいけないのは、さみしかったですね。もうちょっとみんなでワイワイしたかったです。

2年生:去年までは、エコランプロジェクトや委員会活動で帰宅が21時~22時になることも多くて、夕食は適当にコンビニ飯でした。でも、最近はオンライン授業になって自宅にいることが増えたので、自炊しています。得意料理は豚の生姜焼き!食費が安くなりましたね。

2年生:えらい!僕は学食で栄養を摂っていたから、家で食べるようになってカップラーメンとかで済ませがちに……。野菜を食べなくなりました。

相川先生:僕も学生のときは、カップラーメンばっかり食べてたよ(笑)

やっぱり、勉強も大学生活も友達と一緒が楽しい

対面授業とオンライン授業、どっちがいいですか?

1年生:僕は、オンライン授業好きです。起きてすぐでも授業に間に合うし(笑)復習もしやすいから、割と気に入っています。

2年生:自分は、対面派。空いた時間や放課後に、図書館とかに友達と集まって、みんなで一緒に勉強する時間がすごく好きでした。あれこれ言いながら互いに教え合ううちに自然に身についていったけど、それができなくなってしまった今年度は、勉強の仕方を変えなくてはいけませんでした。

2年生:僕も授業のタイプによってはオンラインで大丈夫かな。でも、演習や実験・実習はやっぱり対面授業がいい。あとは、キャンパスで友人と会って何気ない話をしたり、授業の合間にちょっと図書館に寄ったりといった日常がなくなってしまったのは、やっぱりさみしいですね。

相川先生:友達との雑談の内容にはたいした意味はなくても、人と話すという行為自体に大きな意味があるよね。共感し合ったり、刺激し合ったり……。キャンパスで友達と学び競い合える環境は、しっかり作っていきたいですね。

1年生:ぼくも、やっぱり対面のほうが質問しやすいかな。あと僕、"教授"ってすごく頭がいい人達だと思うので、会ってみたいです(笑)まだ面と向かってちゃんと話したことがないので……。せっかく大学に入ったのだから、先生たちともっと仲良くなりたいです!

相川先生:大学に来られる状況になったら、いつでも僕の研究室においで!(笑)少しだけだけど、今、カメラ越しに僕の研究室を案内するよ。

相川先生の研究分野は半導体。タブレットを片手に研究室の設備を説明

2021年の挑戦

今回参加していただいたみなさんに、2021年にチャレンジしたいことを発表してもらいました!
相川先生:「駆」。三つの意味をこめました。一つは運動不足がちなので、八王子キャンパスの南門から5号館までの坂道を駆け上がりたい。二つ目は、色々な方面を駆け回ってマルチタスクをスマートにこなしたい。三つ目は、2021年はコロナとともに始まったリアルパンデミック時代を駆け抜けたいという想いです。

2年生:「講義」。先生たちから1・2年生は基礎、3・4年生から社会につながりがある応用を学ぶ授業が増えると聞きました。将来的には大学院に進んで研究もがんばりたいから、とれる授業は全部とりたいと思っています!

2年生:「製作」。電気系の分野の製作やアウトプットはまだやったことがないので、時間を見つけて家で取り組む予定です!

1年生:「周りを見る!」。大学生活で、課外活動とかバイトを通して、周りを見て他の人のために行動することが大事だなって実感しました。今はまだバイトでもぼーっとしちゃうことも多いけど、もっと気づいて動ける人になりたいです。今の経験が、将来の研究活動にも役立ってくるのかなと思っています。

1年生:「継続」。僕は意志が弱いところがあるのですが……、運動・勉強・生活習慣を整えることは、この1年、毎日継続して頑張り習慣にしたいです!

まだ始まったばかりの2021年。新型コロナウイルス感染拡大防止で活動が制限される中でも、今の自分ができることを考え、目標を持って取り組んでいるみなさん。2021年が素敵な一年になるよう、心から応援しています!

経験を糧に、キャンパスに笑顔を

コロナ禍の授業の在り方は、まだまだ発展途上と語る相川先生。座談会に参加した学生の意見にも熱心に耳を傾け、学生たちの視点で困っていることは何か、足りていない部分は何かを探り、改善の手がかりを探る姿勢が印象的でした。

そして、対面でのコミュニケーションの重要性にも改めて気づかされた今回の座談会。授業で学びを深めるのはもちろんですが、友達とちょっとしたことで笑い合い、何気ない会話の中から刺激を受け合う日常が、大学生のみなさんにとってはかけがえのないものです。
2021年度はキャンパスでの対面授業を実施し、授業の内容に応じてオンライン授業も取り入れる方針で準備を進めています。様々な感染防止策の下、安全面に十分配慮して実施します。新型コロナウイルスとの戦いは今もなお厳しい状況ですが、この一年で得た経験と知識を活かし、みなさんが充実したキャンパスライフを送れるよう教職員一同努力を重ねていきます。

インタビュー参加学生

池田 翔さん(電気電子工学科、2年生)
小木曽 巧一さん(電気電子工学科、2年生)
奥津 大雅さん(電気電子工学科、1年生)
狩野 智哉さん(電気電子工学科、1年生)